最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

「むしろ」

 氷河ノ先輩の視線が、私の顔をなぞる。
 その熱に耐えきれず、私は思わず目をそらした。

「こんなの隠してるほうが反則だろ」

「……へ?」

 間の抜けた声が出る。

 今、なんて。

「お前、本当に自覚ないんだな」

「じ、自覚って何のですか!?」

「そういうとこだよ」

 意味がわからない。
 ほんとうにわからない。
 でも、この人の目がいつもよりずっとやさしく見えるのは、どうして。

 氷河ノ先輩は外したメガネを片手でくるりと回してから、私に向き直った。

「それで」

「は、はい」

「いつまで隠すつもりだ、相沢胡桃」

 その瞬間、全身の血が凍った気がした。

「……え」

「とぼけるな」

 逃げなきゃ。
 頭ではそう思ったのに、足が動かない。

 氷河ノ先輩は一歩、また一歩と距離を詰める。
 私は後ずさり、背中がフェンスに当たった。

「お前、ただの地味な転校生じゃないだろ」

「ち、違……」

「嘘つくの下手なくせに」

「っ」

「朝、正門で絡まれたときもそうだ。普通の女ならあのタイミングであんな重心の置き方しない」

 そこまで見てたの!?

「それに、朔との空気もおかしい。あれは初対面じゃない」

「…………」

「決定的だったのはさっきだ」

 氷河ノ先輩が、私の手首を軽くつかむ。

「転びかけたとき、とっさに受け身を取ろうとしたな」

 図星すぎて、何も言えない。

 先輩は静かに私を見下ろした。

「お前、何者だ」

 どうする。
 ごまかす。
 それとも黙る。

 ぐるぐると考えた末、私はぎゅっと唇をかんだ。
 ここで全部話すわけにはいかない。
 でも、もう完全に怪しまれてる。

「……言えません」

 やっとそれだけ絞り出すと、氷河ノ先輩の目がわずかに揺れた。

「事情はあるんだな」

「……あります」

「危ないことか」

「それも、言えません」

 しばらく沈黙が落ちた。

 風の音だけが、屋上を抜けていく。

 やがて氷河ノ先輩は、小さく息を吐いた。

「そうか」

 怒られると思った。
 問い詰められるとも思った。
 なのに先輩は、それ以上無理に聞いてこなかった。

 代わりに。

「じゃあ、俺がお前を見張る」

「……はい?」

 間抜けな声がまた出た。