最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

もう、誰も引かない。

「……交渉決裂か」

 会長が小さくつぶやいた、そのとき。

 玲央の後ろにいた生徒のひとりが、突然こちらへ走ってきた。
 狙いは私だった。

「胡桃!」

 叫び声。
 次の瞬間、氷河ノ先輩が私を強く引き寄せる。
 私は先輩の胸にぶつかる形で守られ、その前で蓮くんと朔が相手を止めた。

 短い乱れ。
 椅子が倒れる音。
 荒い息。

「ふざけんな」

 氷河ノ先輩の声が、ぞくっとするほど低い。

「もう終わりにしろ」

 玲央が苦く笑う。

「ほんと、君がいると崩せない」

「当たり前だ」

 先輩の腕が、まだ私をかばうように前にある。

「こいつには指一本触れさせない」

 その言葉に、胸が強く熱くなる。

 やがて、下の階から複数の足音が響いてきた。
 先生たちだ。
 九条先輩が事前に動いていたのかもしれない。

「先生が来る」

 いおりくんが短く言う。

 会長が目を閉じ、小さく息をついた。

「……ここまでか」

 玲央は舌打ちする。
 でももう遅い。

 扉が大きく開き、数人の教師がなだれこんできた。
 その瞬間、部屋の空気は完全に変わった。

 言い逃れはできない。
 証拠も、人も、全部そろった。

 長かった。
 でも、終わる。

 私はようやく、張りつめていた息を吐いた。

「胡桃」

 呼ばれて振り向くと、氷河ノ先輩がすぐ近くで私を見ていた。

「終わった」

「……はい」

 そう返した途端、急に力が抜ける。
 膝が揺れて、倒れそうになったその瞬間。

 先輩の腕が、しっかり私を支えた。

「だから言っただろ」

「え」

「最後まで離れるなって」

 少しだけ呆れた声。
 でもその目は、やさしくほどけていた。

「……守ってくれて、ありがとうございました」

 ちゃんと言いたくて、私はまっすぐ見上げた。

 先輩は一瞬だけ黙って、それから私の額にこつんと自分の額を寄せた。

「今さらだ」

「今さらでもです」

「なら」

 先輩の声が少しだけ低くなる。

「その礼は、あとでちゃんと聞く」

「……え?」

「ふたりで」

 どくん、と心臓が跳ねた。

 こんなときにそんなこと言うなんてずるい。
 でも、もう怖いだけじゃない。

 ちゃんと終わった。
 守れた。
 母の願いを、少しだけつなげた気がしたから。