最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

「開けろ」

 九条先輩がうなずき、石板を持ち上げる。
 中には、防水布に包まれた薄いファイルが一冊。

「それだ」

 私が手を伸ばしかけた瞬間。

「触らせないよ」

 玲央が一気に踏みこんできた。

「危ない!」

 誰かの声。
 次の一瞬、私は強く腕を引かれて体勢を崩した。

 氷河ノ先輩が私を抱き寄せるようにして引き戻し、その前に立つ。
 玲央の手は空を切った。

「二度と触るな」

 先輩の声は、今まででいちばん冷たかった。

 玲央も笑ってはいなかった。

「……本気だね」

「当たり前だ」

「そこまで守る?」

「命に代えても」

 その言葉に、胸が大きく震える。

 玲央の目が細くなる。
 空気がぴりつめる。
 でも次の瞬間、後ろにいた女子生徒が小さく口を開いた。

「玲央、時間」

 短いその一言で、玲央が舌打ちする。

「ちぇ。今日はここまでか」

「逃がすか」

 蓮くんが動こうとする。
 でも玲央は後ろへ下がりながら、最後に私だけを見た。

「そのファイルを見れば、君はもっと知りたくなるよ」

「……」

「そして、きっと選ぶ」

「何を」

「壊す側か、守る側か」

 意味がわからない。
 でも、その言葉だけが妙に胸に残った。

「またね、お姫様」

「呼ぶな!」

 私が思わず怒鳴った瞬間、玲央は少しだけ楽しそうに笑って、女子生徒とともに裏口から消えた。

 静寂が戻る。

 でも、誰もすぐには動かなかった。

「……大丈夫か」

 氷河ノ先輩が振り返る。

「う、うん」

 そう答えた瞬間、自分の膝が少し震えているのに気づいた。

「震えてる」

「ちょっとだけです」

「強がるな」

 そう言って、先輩は私の手を強く握った。
 その体温に、ようやく少しだけ息ができる。

 九条先輩が、ファイルをそっと差し出す。

「見る?」

 私は小さくうなずいた。

 防水布をほどく。
 中から出てきたのは、古い名簿と数枚の記録用紙。
 そして最後に、一通の封筒。

 表には、震えるような手書きでこう書かれていた。

 胡桃へ

「……え」

 全身が凍りつく。

「どうして」

 だってこの名前は、私の名前だ。
 昔の資料なのに。
 まだ生まれていなかったはずなのに。

 震える手で封筒を持ち上げる。
 その筆跡を見た瞬間、胸が大きく鳴った。

「これ……」

 見たことがある。
 家で見た、母のメモの字にそっくりだった。