最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

「母は被害者だったって聞きました」

「誰に?」

 玲央が笑う。
 でもその目は冷たい。

「九条? それともそこにいる騎士様?」

「黙れ」

 氷河ノ先輩が私の前に立つ。

「胡桃に話しかけるな」

「ほんと独占欲強いね」

「お前に関係ない」

「あるよ」

 玲央が一歩踏み出す。

「その子は、もうこっち側なんだから」

「違います!」

 反射的に叫ぶ。
 玲央がまた楽しそうに目を細めた。

「否定の仕方まで似てる」

「誰に」

 私が聞くと、玲央は少しだけ首をかしげた。

「お母さんに」

 その一言で、呼吸が止まりそうになる。

「胡桃、聞くな」

 氷河ノ先輩の声。
 でももう、止まれなかった。

「母は何をしたんですか」

「した、というより選んだんだよ」

 玲央は静かに笑う。

「ローズの中枢にいたのに、最後に全部拒んだ」

「中枢……」

「だから壊れた」

 九条先輩が険しい声で口を挟む。

「違う。壊していたのは最初からお前たちだ」

「正義ぶるのはやめてよ」

 玲央の目が一瞬だけ冷える。

「君だって見てただけだろ」

 空気が凍る。
 九条先輩が黙りこむ。
 その沈黙が答えみたいで、胸が苦しくなる。

「とにかく」

 玲央はまた私を見る。

「その子には知る資格がある。母親が捨てた場所で、何が起きたのか」

「捨てたんじゃない!」

 叫んだのは自分でも驚くほど大きな声だった。

 みんなが一瞬、私を見る。

「……私のお母さんは、逃げたかったんじゃなくて、守りたかったんだと思う」

 根拠なんてない。
 でもそうじゃなきゃ、苦しすぎる。

「私を、遠ざけたかったんだと思う」

 玲央の笑みが、ほんのわずかに消えた。

「へえ」

「だから、利用されるためにここにいるんじゃない」

 ぎゅっと拳を握る。

「知るために来ました」

「胡桃」

 氷河ノ先輩が私の名前を呼ぶ。
 でも今は、その声が背中を押してくれた。

「証拠、見せてください」

 私は九条先輩を見る。

「花壇の下にあるんですよね」

「……ああ」

「なら、開けたいです」

 一瞬の静寂。
 そのあと、玲央が小さく笑った。

「やっぱり面白い」

「お前は黙ってろ」

 氷河ノ先輩の声が低く響く。

「朔、蓮、いおり」

「了解」

 三人の返事は早かった。

 次の瞬間、空気が一気に動く。

 朔と蓮くんが玲央たちの進路をふさぎ、いおりくんが私たちの死角を埋める。
 氷河ノ先輩は私を守る位置を崩さないまま、九条先輩に短く言った。