最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

「……すごい」

 思わずつぶやく。
 荒れているのに、どこか異様に静かで、息をするのもためらうような空気だった。

「胡桃先輩、足元気をつけて」

 いおりくんの声が後ろから届く。

「ガラス多いです」

「うん」

 私は頷きながら、氷河ノ先輩のすぐ隣を歩く。
 さっきまで怖かったのに、隣にいる体温のおかげでぎりぎり踏み出せる。

「九条は何を隠したって言ってた?」

 蓮くんが小声で聞く。

「証拠になるもの」

 氷河ノ先輩が短く返す。

「場所までは」

「中央花壇の下だよ」

 突然聞こえた声に、全員が一斉に振り向いた。

 壇の向こう。
 薄暗い奥から、九条先輩がゆっくり姿を見せる。

「九条先輩!?」

「驚いた?」

 静かな笑み。
 でもその顔にも、いつもの余裕は少なかった。

「どうしてここに」

「場所を知ってるのは僕だから」

「勝手に動くな」

 氷河ノ先輩の声が冷たく落ちる。

「君たちだけだと、探す時間がかかるだろう」

「信用ならん」

「それはお互いさま」

 九条先輩はそう返して、花壇の前にしゃがみこんだ。

「この下に小さな収納がある」

 古びた石板の端を押すと、かすかに金具の音がした。
 ほんの少しだけ、床の一部が浮く。

「……ほんとだ」

 私は思わず息をのんだ。

「中を」

 九条先輩が言いかけた、その瞬間。

 ぱき、とどこかでガラスが踏み割られる音がした。

 全員の空気が一変する。

「来たか」

 蓮くんが低くつぶやく。

 次の瞬間、旧温室の別の入口から、黒い影が二つ入ってきた。

「見つけるの、早かったね」

 聞き覚えのある声。
 白瀬玲央が、楽しそうに笑っていた。

 その後ろには、細身の女子生徒が一人。
 見たことのない顔。
 でも制服は、この学園のものだった。

「やっぱり学園の中にいたんだ」

 朔が低く言う。

 女子生徒は無表情のまま、私を見た。

「その子?」

「そう」

 玲央が笑う。

「元凶の娘」

 その言葉に、胸がひやっと冷える。

「元凶、だと」

 氷河ノ先輩の声が鋭くなる。

「言い方が悪かったかな」

 玲央は肩をすくめる。

「でも、彼女の母親が全部を壊したのは事実だよ」

「嘘です」

 気づけば、私は声を出していた。

 玲央の視線がすぐに私へ向く。

「どうしてそう言い切れるの」

「知らないけど」

「知らないのに?」

「でも、そんな言い方はおかしいです」

 自分でも震えてるのがわかる。
 それでも止まりたくなかった。