最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

夕暮れの旧校舎裏は、人の気配がほとんどなかった。

 その先にある旧温室は、蔦に半分飲みこまれたみたいに静かに建っている。
 割れたガラス。
 錆びた鉄骨。
 近づくだけで、長く捨てられていた場所だとわかる。

「……ここ」

 思っていた以上に不気味で、私は思わず足を止めた。

「胡桃」

 すぐ隣から氷河ノ先輩の声が落ちる。

「無理なら下がれ」

「……ううん」

 私は小さく首を振った。

「行きます」

 そう答えると、先輩はほんの少しだけ目を細める。
 それから、私の手首の発信機をもう一度確認した。

「絶対離れるな」

「はい」

 朔が先に周囲を確認し、蓮くんが裏手へ回る。
 いおりくんは入口脇に立って、静かに耳を澄ませていた。

「今のところ中に大きな物音はありません」

「でも気配はある」

 朔が低く言う。

「一人か二人」

 空気がぴんと張る。

「行くぞ」

 氷河ノ先輩が古い扉に手をかける。
 きい、と鈍い音を立てて、旧温室の扉がゆっくり開いた。

 中は薄暗かった。
 割れた天井から夕方の光がまだらに落ちて、床には枯れた葉が散らばっている。
 使われなくなった棚。
 倒れた鉢。
 そして奥には、昔は花壇だったらしい高い壇が見えた。