最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

「じ、自分でつけます!」

「胡桃ちゃんかわいそうやわ」

 蓮くんが面白そうに笑う。

「男どもが全員めんどくさい」

「鳳条先輩も含まれてますよ」

「せやな」

 否定しないんだ。

 でもそのやり取りの中で、少しだけ緊張がやわらいだ。
 みんながいてくれる。
 それだけで、怖さがちゃんと半分になる。

 準備が終わって、移動する直前。

 私は教室の窓に映った自分を見て、小さく息を吐いた。

「……大丈夫」

 自分に言い聞かせるみたいにつぶやく。
 すると、背後から低い声が落ちた。

「大丈夫じゃなくてもいい」

 振り返ると、氷河ノ先輩がすぐ近くにいた。

「先輩」

「怖いなら、ちゃんと怖がれ」

「え」

「無理して平気なふりするな」

 その目が、まっすぐ私をとらえる。

「そのかわり」

 先輩の指先が、私の手首につけた発信機にそっと触れた。

「絶対に俺から離れるな」

 胸がどくんと大きく鳴る。

「……はい」

「返事だけは素直だな」

「だって……」

「だって?」

「そう言われると、逆らえないです」

 小さく答えると、先輩はほんの少しだけ目を細めた。

「ならそのままでいい」

「先輩、それちょっとずるいです」

「知ってる」

「最近そればっかりです」

「お前にだけな」

「……っ」

 だめだ。
 こんな直前に甘いこと言われたら、余計に落ち着かない。

 そのとき、教室の外から蓮くんの声がした。

「そろそろ行くで」

 空気が変わる。

 いよいよだ。
 旧温室。
 母がいた場所。
 そして、ローズの過去につながる場所。

 私はぎゅっと鞄の持ち手を握った。
 すると次の瞬間、その上から大きな手が重なる。

「行くぞ」

 氷河ノ先輩の声は低くて、強い。

「今度は俺が、全部見届ける」