最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

「胡桃先輩は絶対に一人で動かない」

 いおりくんが指を立てる。

「これは最重要です」

「うん」

「走って逃げるのもなし」

 朔が付け足す。

「えっ、でも危なくなったら」

「そのときは俺たちが動く」

 氷河ノ先輩が言い切る。

「お前は勝手に動くな」

「……はい」

 こういうときだけ、私は異様に素直になる。
 だってみんなの目が本気だから。

「旧温室の入口は二つある」

 蓮くんが簡単な見取り図を机に描く。

「正面は古い鍵。裏手は壊れかけの搬入口や」

「向こうも隠れてる可能性がある」

 朔の指先が地図の横をなぞる。

「灯りは最小限。スマホのライトは必要なときだけ」

「了解です」

 私も小さくうなずく。

 そのとき、不意に氷河ノ先輩が私の手首を軽くつかんだ。

「え?」

「これ」

 差し出されたのは、小さな黒いヘアゴムみたいなものだった。

「何ですか」

「発信機」

「はっしんき!?」

「髪でも手首でもいい。つけろ」

「そんなさらっと渡すものですか!?」

「お前相手には必要だ」

 真顔すぎる。
 でも、ほんの少しだけうれしいと思ってしまう自分がいる。

「過保護が進化しとる」

 蓮くんが笑う。

「もはや監視やな」

「保護だ」

 氷河ノ先輩が即答する。

「いや紙一重やろ」

「違う」

「違わんて」

 ふたりが言い合う横で、いおりくんがじっと私の手首を見た。

「それ、僕がつけてもいいですか」

「は?」

 氷河ノ先輩の声が一気に低くなる。

「先輩だと手が震えそうなので」

「震えない」

「どうでしょう」

「お前には触らせない」

「独占欲がすごいですね」

 にこにこしてるのに言うことが強い。
 私はあわてて発信機を受け取った。