「私、ずっと一人で探ってたんですよ」
「知ってる」
「危ないって止めるなら、理由を言ってくれたらよかったのに」
「言えなかった」
「どうして!」
思わず声が大きくなる。
静かな資料室に響いて、自分でもびくっとした。
「どうして、いつも守るみたいなことばっかり言って、いちばん大事なことは隠すんですか」
「……っ」
「私、そんなに頼りないですか」
その瞬間。
氷河ノ先輩の目がはっきり揺れた。
「違う」
「じゃあ何ですか」
「お前が」
先輩はそこで言葉を切る。
苦しそうに眉を寄せて、それでも無理やり続けた。
「お前が、この件に深く入れば入るほど危なくなるってわかってたからだ」
「もう危なくなってます」
「だからだよ」
低い声が落ちる。
「これ以上、巻きこみたくなかった」
「でももう遅いです」
「わかってる!」
その声に、私も九条先輩も一瞬黙った。
氷河ノ先輩が、こんなふうに感情をあらわにするなんて。
初めて見るかもしれない。
「わかってる……」
先輩は、少しだけ顔を伏せた。
「わかってたのに、止めきれなかった」
その言葉に、胸がきゅっとなる。
「仁」
九条先輩が何か言いかける。
でも氷河ノ先輩は、それを遮るように私だけを見た。
「お前の母親のことは、昔この学園で問題になった事件として聞いただけだ」
「事件……」
「詳しい中身までは知らない。ただ、名前を見たときに引っかかった」
「じゃあ転入してきたときから?」
「……ああ」
息が止まりそうになる。
最初から。
じゃあ先輩があんなに警戒していたのも、距離を詰めてきたのも、全部。
「私が相沢だから?」
かすれた声で聞くと、先輩は一瞬だけ目を見開いた。
「違う」
「でも最初は、そうですよね」
「最初はそうだ」
はっきり認められて、胸が痛んだ。
やっぱり。
私は最初から特別だったわけじゃなくて。
母親の影を見られていただけなんだ。
「……そっか」
笑おうとした。
でもうまくできなかった。
「胡桃」
先輩が一歩近づく。
「でも今は違う」
「そういうの、ずるいです」
「ずるくてもいい」
「よくないです」
視界がにじむ。
だめだ。
泣きたくないのに。
「私、ちゃんと知りたかっただけなのに」
「……ああ」
「信じたかったのに」
ぽろっと、涙が落ちた。
しまった、と思う。
でももう止まらない。
「なんで隠すんですか……」
声まで震えてしまう。
こんなのみっともない。
なのに氷河ノ先輩は、そんな私を見た瞬間、ひどく痛そうな顔をした。
「知ってる」
「危ないって止めるなら、理由を言ってくれたらよかったのに」
「言えなかった」
「どうして!」
思わず声が大きくなる。
静かな資料室に響いて、自分でもびくっとした。
「どうして、いつも守るみたいなことばっかり言って、いちばん大事なことは隠すんですか」
「……っ」
「私、そんなに頼りないですか」
その瞬間。
氷河ノ先輩の目がはっきり揺れた。
「違う」
「じゃあ何ですか」
「お前が」
先輩はそこで言葉を切る。
苦しそうに眉を寄せて、それでも無理やり続けた。
「お前が、この件に深く入れば入るほど危なくなるってわかってたからだ」
「もう危なくなってます」
「だからだよ」
低い声が落ちる。
「これ以上、巻きこみたくなかった」
「でももう遅いです」
「わかってる!」
その声に、私も九条先輩も一瞬黙った。
氷河ノ先輩が、こんなふうに感情をあらわにするなんて。
初めて見るかもしれない。
「わかってる……」
先輩は、少しだけ顔を伏せた。
「わかってたのに、止めきれなかった」
その言葉に、胸がきゅっとなる。
「仁」
九条先輩が何か言いかける。
でも氷河ノ先輩は、それを遮るように私だけを見た。
「お前の母親のことは、昔この学園で問題になった事件として聞いただけだ」
「事件……」
「詳しい中身までは知らない。ただ、名前を見たときに引っかかった」
「じゃあ転入してきたときから?」
「……ああ」
息が止まりそうになる。
最初から。
じゃあ先輩があんなに警戒していたのも、距離を詰めてきたのも、全部。
「私が相沢だから?」
かすれた声で聞くと、先輩は一瞬だけ目を見開いた。
「違う」
「でも最初は、そうですよね」
「最初はそうだ」
はっきり認められて、胸が痛んだ。
やっぱり。
私は最初から特別だったわけじゃなくて。
母親の影を見られていただけなんだ。
「……そっか」
笑おうとした。
でもうまくできなかった。
「胡桃」
先輩が一歩近づく。
「でも今は違う」
「そういうの、ずるいです」
「ずるくてもいい」
「よくないです」
視界がにじむ。
だめだ。
泣きたくないのに。
「私、ちゃんと知りたかっただけなのに」
「……ああ」
「信じたかったのに」
ぽろっと、涙が落ちた。
しまった、と思う。
でももう止まらない。
「なんで隠すんですか……」
声まで震えてしまう。
こんなのみっともない。
なのに氷河ノ先輩は、そんな私を見た瞬間、ひどく痛そうな顔をした。



