「じゃあ、扉の外に一人だけ」
「一人?」
「それ以上はだめ」
場がまたざわつく。
「俺が行く」
氷河ノ先輩が即答する。
「当然だろ」
「氷河くんだと、外でも気配が強すぎる」
「意味がわからん」
「向こうに警戒される」
「つまり、外におるやつは別におるってことやな」
蓮くんが鋭く言う。
九条先輩は答えない。
その沈黙が、逆に肯定みたいだった。
「じゃあ僕が行きます」
いおりくんがさらっと手を挙げる。
「気配消すの得意なので」
「お前もだめだ」
氷河ノ先輩が即座に切る。
「なんでですか」
「別の意味で不安だ」
「失礼ですね」
「事実やろ」
蓮くんが肩をすくめる。
「じゃあ俺でええやん」
「鳳条先輩は目立ちます」
「それを言うならみんな目立つわ」
言い合いになりかけた、そのとき。
「……朔さんがいい」
九条先輩がぽつりと言った。
全員がそちらを見る。
「朔さんなら気配を消せるし、感情で突っ走らない」
「感情で突っ走るって誰のことだ」
氷河ノ先輩の声がさらに低くなる。
「少なくとも君ではあるね」
「瑞希」
朔が初めて、少しだけ強い声を出した。
「変なことをしたら止める」
「わかってる」
「胡桃が嫌がったら、その時点で終わりだ」
「それもわかってるよ」
しばらくして。
結局、放課後に図書準備室へ行くことになった。
授業中も落ち着かなかった。
ノートを取っていても、頭の中では何度も同じ言葉が回っている。
君自身に関係すること。
どうして狙われるのか。
そして放課後。
人気のない廊下を歩きながら、私はぎゅっと鞄の持ち手を握りしめていた。
「緊張してるな」
隣を歩く朔が、低く言う。
「……うん」
「無理そうならすぐやめろ」
「でも、知りたい」
「知ってる」
短い返事。
でもその声は、ちゃんと私を落ち着かせてくれた。
図書準備室の前には、九条先輩がすでに立っていた。
「来たね」
「……はい」
「朔さんは外で」
「わかった」
朔が扉の横に立つ。
私は一度だけその顔を見た。
朔は静かにうなずいてくれる。
大丈夫。
そう言われた気がした。
意を決して、私は九条先輩と一緒に部屋の中へ入った。
扉が閉まる。
古い本の匂い。
小さな窓から差す夕方の光。
九条先輩は机の引き出しから、ひとつの古い封筒を取り出した。
「これを見て」
「……何ですか」
「昔の資料だよ」
封筒の中から出てきたのは、一枚の色あせた写真だった。
そこに写っていたのは、学園の古い中庭。
そして、並んで立つ数人の生徒。
でも私の目を奪ったのは、その中央にいる女の人だった。
「……え」
息が止まる。
知らない人のはずなのに。
その人は、私にすごくよく似ていた。
「一人?」
「それ以上はだめ」
場がまたざわつく。
「俺が行く」
氷河ノ先輩が即答する。
「当然だろ」
「氷河くんだと、外でも気配が強すぎる」
「意味がわからん」
「向こうに警戒される」
「つまり、外におるやつは別におるってことやな」
蓮くんが鋭く言う。
九条先輩は答えない。
その沈黙が、逆に肯定みたいだった。
「じゃあ僕が行きます」
いおりくんがさらっと手を挙げる。
「気配消すの得意なので」
「お前もだめだ」
氷河ノ先輩が即座に切る。
「なんでですか」
「別の意味で不安だ」
「失礼ですね」
「事実やろ」
蓮くんが肩をすくめる。
「じゃあ俺でええやん」
「鳳条先輩は目立ちます」
「それを言うならみんな目立つわ」
言い合いになりかけた、そのとき。
「……朔さんがいい」
九条先輩がぽつりと言った。
全員がそちらを見る。
「朔さんなら気配を消せるし、感情で突っ走らない」
「感情で突っ走るって誰のことだ」
氷河ノ先輩の声がさらに低くなる。
「少なくとも君ではあるね」
「瑞希」
朔が初めて、少しだけ強い声を出した。
「変なことをしたら止める」
「わかってる」
「胡桃が嫌がったら、その時点で終わりだ」
「それもわかってるよ」
しばらくして。
結局、放課後に図書準備室へ行くことになった。
授業中も落ち着かなかった。
ノートを取っていても、頭の中では何度も同じ言葉が回っている。
君自身に関係すること。
どうして狙われるのか。
そして放課後。
人気のない廊下を歩きながら、私はぎゅっと鞄の持ち手を握りしめていた。
「緊張してるな」
隣を歩く朔が、低く言う。
「……うん」
「無理そうならすぐやめろ」
「でも、知りたい」
「知ってる」
短い返事。
でもその声は、ちゃんと私を落ち着かせてくれた。
図書準備室の前には、九条先輩がすでに立っていた。
「来たね」
「……はい」
「朔さんは外で」
「わかった」
朔が扉の横に立つ。
私は一度だけその顔を見た。
朔は静かにうなずいてくれる。
大丈夫。
そう言われた気がした。
意を決して、私は九条先輩と一緒に部屋の中へ入った。
扉が閉まる。
古い本の匂い。
小さな窓から差す夕方の光。
九条先輩は机の引き出しから、ひとつの古い封筒を取り出した。
「これを見て」
「……何ですか」
「昔の資料だよ」
封筒の中から出てきたのは、一枚の色あせた写真だった。
そこに写っていたのは、学園の古い中庭。
そして、並んで立つ数人の生徒。
でも私の目を奪ったのは、その中央にいる女の人だった。
「……え」
息が止まる。
知らない人のはずなのに。
その人は、私にすごくよく似ていた。



