最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

だけどその日からだった。

 校内でやたらと氷河ノ仁と目が合うようになったのは。

 廊下ですれ違えば見られる。
 教室の前を通れば止まって見られる。
 昼休みに中庭へ行けば、なぜかそこにもいる。

 ……怖い。
 いや、かっこいい。
 でもやっぱり怖い。

 しかも困ったことに、彼だけじゃなかった。

「なあ、転校生ちゃん。そない警戒せんでもええやん?」

 放課後、階段の踊り場でにやっと笑いかけてきたのは、明るい茶髪の男子。
 顔がいい。とにかく顔がいい。
 そして距離が近い。

「お、近い近い近いですっ」

「ははっ、そんな慌てるん可愛ええなぁ」

「か、かわ……!?」

「俺、鳳条蓮。困ったことあったら頼ってええで?」

 軽そう。
 すごく軽そう。
 なのに、向けられる目だけは冗談みたいに見えなかった。

「……胡桃」

 不意に、低い声。

 振り向けば、廊下の奥に無表情で立っていたのは、幼なじみの雨宮朔だった。
 学園に潜入することを知る、数少ない協力者。

「さ、朔……!」

「名前呼ぶな」

「あっ、ご、ごめん……!」

 しまった。
 学校では他人のふりをする約束だったのに。

 蓮くんが面白そうに目を細める。

「へえ。知り合い?」

「ち、違います!」

「違わないだろ」

 朔が淡々とそう返してきて、私はぎくっとした。
 ちょ、ちょっと朔!?
 もう少しこう、うまくごまかしてくれてもいいのでは!?

「ふぅん?」

 蓮くんがますますにやにやする。
 だめだ。この人、絶対楽しんでる。

「相沢さん、大丈夫?」

 そのとき、やわらかな声が割って入った。

 現れたのは、整った顔立ちにやさしい笑みを浮かべた男子生徒。
 教科書を抱えた姿まで絵になるような、いかにも優等生という感じの人。

「何か困っているなら、手伝うよ」

「あ……」

「俺は九条瑞希。クラス委員なんだ。よかったら案内しようか」

 わ、やさしい……!
 この学校、怖い人ばっかりかと思ったら、天使いた……!

「ありがとうございますっ」

 ほっとして顔を上げた瞬間。

「先輩、それずるいです」

 ひょこっと瑞希先輩の後ろから現れたのは、ふわっとした雰囲気の可愛い男子だった。
 くりっとした目に、やわらかい笑顔。
 いかにも人懐っこそうな年下男子。

「僕も胡桃先輩と仲良くしたいです」

「えっ、わ、私ですか?」

「はい。だめですか?」

 しゅん、と眉を下げられて、私は思わずぶんぶんと首を振った。