「胡桃」
先輩の低い声が、私を現実に引き戻す。
「聞くな」
「……でも」
「聞くな」
今度はさっきより強い声。
私ははっとして口を閉じた。
「いいね、その反応」
玲央が笑う。
「ちゃんと言うこと聞くんだ」
「お前」
氷河ノ先輩の声に、本気の怒気が混じる。
「そう怒らないでよ」
玲央は片手を上げて、降参みたいな仕草をした。
「今日は顔を見に来ただけ。本当にそれだけ」
「次はないと思え」
朔が低く言う。
「校門の前まで来たこと、後悔させる」
「怖い怖い」
玲央は笑ったまま、ゆっくり後ろへ下がる。
でも最後に、私だけを見て足を止めた。
「胡桃」
ぞくっとする。
さっき名前を呼ぶなって言ったのに。
「君はまだ、自分がどれだけ特別か知らない」
「……っ」
「でも、じきにわかる」
その笑みは甘いのに、ひどく危険だった。
「そのとき、君が誰の手を取るのか楽しみにしてる」
「取らせるわけないだろ」
氷河ノ先輩が即座に言い切る。
玲央は少しだけ驚いた顔をして、それからおかしそうに笑った。
「へえ。本気だ」
風が吹く。
次の瞬間、玲央はふっと暗がりに溶けるように身を引いた。
「またね、お姫様」
「待て!」
蓮くんが追おうとしたけれど、もうその姿は見えなかった。
しんとした夜気の中、私だけが取り残されたみたいに立ち尽くす。
「……誰に似てるって、どういう意味なんだろ」
ぽつりと漏らした瞬間。
「考えるな」
氷河ノ先輩がすぐに返す。
「でも」
「今はいい」
「よくないです」
思わず言い返すと、先輩は少しだけ黙った。
それから、私の前に立って目線を合わせる。
「胡桃」
真剣な顔。
いつもよりずっと近い。
「お前が何者でも、俺には関係ない」
「え……」
「狙われるなら守るだけだ」
まっすぐすぎる言葉に、胸がぎゅっと熱くなる。
「そんなの、ずるいです……」
「何が」
「そうやって、すぐ心臓に悪いこと言うところです」
一瞬、沈黙。
そのあと、蓮くんがぶっと吹き出した。
先輩の低い声が、私を現実に引き戻す。
「聞くな」
「……でも」
「聞くな」
今度はさっきより強い声。
私ははっとして口を閉じた。
「いいね、その反応」
玲央が笑う。
「ちゃんと言うこと聞くんだ」
「お前」
氷河ノ先輩の声に、本気の怒気が混じる。
「そう怒らないでよ」
玲央は片手を上げて、降参みたいな仕草をした。
「今日は顔を見に来ただけ。本当にそれだけ」
「次はないと思え」
朔が低く言う。
「校門の前まで来たこと、後悔させる」
「怖い怖い」
玲央は笑ったまま、ゆっくり後ろへ下がる。
でも最後に、私だけを見て足を止めた。
「胡桃」
ぞくっとする。
さっき名前を呼ぶなって言ったのに。
「君はまだ、自分がどれだけ特別か知らない」
「……っ」
「でも、じきにわかる」
その笑みは甘いのに、ひどく危険だった。
「そのとき、君が誰の手を取るのか楽しみにしてる」
「取らせるわけないだろ」
氷河ノ先輩が即座に言い切る。
玲央は少しだけ驚いた顔をして、それからおかしそうに笑った。
「へえ。本気だ」
風が吹く。
次の瞬間、玲央はふっと暗がりに溶けるように身を引いた。
「またね、お姫様」
「待て!」
蓮くんが追おうとしたけれど、もうその姿は見えなかった。
しんとした夜気の中、私だけが取り残されたみたいに立ち尽くす。
「……誰に似てるって、どういう意味なんだろ」
ぽつりと漏らした瞬間。
「考えるな」
氷河ノ先輩がすぐに返す。
「でも」
「今はいい」
「よくないです」
思わず言い返すと、先輩は少しだけ黙った。
それから、私の前に立って目線を合わせる。
「胡桃」
真剣な顔。
いつもよりずっと近い。
「お前が何者でも、俺には関係ない」
「え……」
「狙われるなら守るだけだ」
まっすぐすぎる言葉に、胸がぎゅっと熱くなる。
「そんなの、ずるいです……」
「何が」
「そうやって、すぐ心臓に悪いこと言うところです」
一瞬、沈黙。
そのあと、蓮くんがぶっと吹き出した。



