最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

校門の外。
 夜の静けさの中で、その男だけが異質だった。

 黒いロングコート。
 冷たい目。
 そして、人をからかうみたいな薄い笑み。

「ローズへようこそ、お姫様」

 その言葉に、背筋がぞくりとした。

「……っ」

 私は無意識に、氷河ノ先輩の背中に少しだけ身を寄せた。
 すると先輩の肩がわずかに動く。
 たぶん気づかれた。
 恥ずかしいのに、今は離れたくなかった。

「名乗れ」

 氷河ノ先輩の声は、氷みたいに冷たい。

「そんな怖い顔しないでよ」

 男は軽く両手を上げてみせた。

「今日はほんとに挨拶だけだって」

「信用できるか」

「できないだろうね」

 あっさり言って、男はふっと笑う。

「でも嘘は言ってない」

 視線が、私へまっすぐ向く。

「君に会ってみたかったんだ。相沢胡桃」

「……どうして、私の名前を」

「知らないと思った?」

 その声音はやわらかい。
 でも、その奥にあるものはぞっとするくらい冷たい。

「君、いま学園でいちばん注目されてるから」

「ふざけるな」

 蓮くんが一歩前に出る。

「何が目的や」

「目的?」

 男は少しだけ考えるふりをしたあと、くすっと笑った。

「今は観察かな」

「観察……?」

 思わずつぶやくと、男は嬉しそうに目を細める。

「そう。その反応、可愛いね」

「っ……!」

 ぞわっと鳥肌が立つ。
 褒められた感じなんて全然しない。
 獲物を見つけたみたいな目だ。

「てめえ」

 氷河ノ先輩の声が、ぐっと低くなる。

「胡桃を見るな」

「無理だよ」

 男は肩をすくめた。

「だって彼女、想像よりずっと面白そうだ」

「面白そう、だと?」

「うん」

 男は一歩だけ近づく。
 その瞬間、氷河ノ先輩たち全員の空気が鋭く変わった。