最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

「今日はもう終わりだ」

「……はい」

 これ以上は言い返せなかった。
 先輩の声に、少しだけ焦りが混じっていたから。

 旧資料棟を出たあとも、先輩は手を離してくれなかった。
 夜道を歩きながら、私は何度もつながれた手を意識してしまう。

「氷河ノ先輩」

「何だ」

「もう、だいぶ離れてますよ」

「だから何だ」

「手、です」

「離さない」

「えぇっ」

 即答だった。

 隣を歩いていた蓮くんが吹き出す。

「氷河、開き直っとるやん」

「うるさい」

「胡桃ちゃん、嫌やったら言いや」

 そう言われて、私は言葉に詰まった。

 嫌、ではない。
 むしろ、安心する。
 でもそれを認めるのも悔しい。

「……嫌じゃ、ないです」

 小さく答えると、先輩の指先がぴくっと動いた。

「へえ」

 蓮くんが面白そうに笑う。

「よかったな、氷河」

「茶化すな」

 ぶっきらぼうなのに、先輩の耳が少しだけ赤い気がした。
 気のせいかな。
 いや、気のせいじゃないかも。

「胡桃」

 今度は朔が私の逆側に並ぶ。

「しばらく一人で動くな」

「……うん」

「連絡は必ず返せ」

「それも、うん」

「返さなかったら探す」

 短いのに重い。
 思わずこくこくとうなずくと、少し前を歩いていたいおりくんがくるっと振り返った。

「僕にも返してくださいね」

「え」

「既読無視されたら泣きます」

「絶対泣かないでしょ……」

「どうでしょう」

 にこっと笑う。
 昼間なら可愛いだけなのに、今はその笑顔の意味を考えてしまってどきっとする。

「先輩」

 いおりくんが少しだけ歩調を落として、私を見た。

「さっきの返事、ちゃんと待ってますから」

「……っ!」

「おい」

 氷河ノ先輩の声が一気に低くなる。

「今それ言うな」

「なんでですか」

「空気読め」

「読んだうえでです」

 また始まりそう。
 私はあわてて口を挟んだ。

「い、いまはその話なしでお願いしますっ」

 するといおりくんは、少しだけ残念そうに唇を尖らせた。

「はーい」

 全然納得してなさそう。

 そのまま校門まで来たところで、蓮くんがふと立ち止まる。

「……誰かおるな」