最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

「氷河くんの言う通りだよ」

 静かな声に振り向くと、九条先輩がまだ窓辺に立っていた。
 月明かりの中で、その整った顔がひどく冷たく見える。

「今夜はもう引いたほうがいい」

「信用できるか」

 氷河ノ先輩が低く返す。

「別にしてもらわなくていいよ」

 九条先輩はわずかに肩をすくめた。

「でも、この警告を出した相手は本気だ。さっきの一撃は脅しで済んだ。次は違うかもしれない」

 その言い方。
 まるで相手をよく知っているみたいで、また胸がざわつく。

「九条先輩」

 私は小さく息を吸った。

「先輩は、どこまで知ってるんですか」

 瑞希先輩はしばらく私を見つめていた。
 それから、少しだけ苦く笑う。

「君が知れば、もっと危なくなるところまで」

「それ、答えになってないです」

「答えないようにしてるんだよ」

 やさしい口調なのに、拒絶ははっきりしていた。

「だから忠告したのに」

「……っ」

「でも君は止まらない」

 その目が、少しだけ痛そうに揺れる。

「ほんとに厄介だね」

 そう言うくせに、どこかやわらかい響きが混じっていて、余計にわからなくなる。

「胡桃に近づくな」

 氷河ノ先輩が私の前に立った。

「お前の言葉はもうひとつも信用しない」

「そう」

 九条先輩は静かにうなずく。

「それでも、今夜は連れて帰ってあげて。彼女はもう目をつけられてる」

 その一言に、その場の空気がまた重くなる。

「最初からそれが目的だったんか」

 蓮くんが低く言う。

「胡桃ちゃんをおびき出すための」

「たぶんね」

 九条先輩はあっさり認めた。

「でも、君たちがここまで全員そろうのは想定外だったんじゃないかな」

「人ごとみたいに言うな」

 朔の声も冷たい。

 私はぎゅっと手を握った。
 悔しい。
 私は追う側のつもりでいたのに、完全に向こうの手のひらの上だ。

「帰るぞ」

 氷河ノ先輩が、今度ははっきりと私の手を取る。

「えっ、でも」

「でもじゃない」

 強い口調。
 でも引っぱる手は、痛くないようにちゃんと力加減されていた。