最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

 割れた窓から吹きこんだ夜風が、古い廊下を冷たく抜けていく。

 私は氷河ノ先輩に抱き込まれたまま、しばらく動けなかった。
 胸の奥がどくどくとうるさい。
 怖かったのもある。
 でも、それだけじゃない。

「……胡桃」

 耳元で落ちた低い声に、肩がぴくっと震える。

「ケガしてないか」

「だ、大丈夫です……」

「ほんとか」

「ほ、ほんとに」

 そう答えても、先輩の腕はなかなか離れない。
 むしろ、まだ少し強く抱き寄せられた気さえした。

「氷河先輩、過保護すぎ」

 いおりくんの声が飛ぶ。
 私はその一言で、はっと我に返った。

「わ、私ほんとに大丈夫ですっ」

 あわてて先輩の胸を押す。
 すると氷河ノ先輩は、少しだけ間を置いてから、ようやく腕をゆるめた。

「……無事ならいい」

 短い言葉。
 でもその顔は、さっきまでよりずっと険しい。

 床に刺さった黒い矢のようなものへ、朔が静かに近づいた。

「紙が巻いてある」

「触るな」

 氷河ノ先輩がすぐに制する。

「罠の可能性もある」

「わかってる」

 朔は低く返して、その場にしゃがみこんだ。
 直接手では触れず、制服のハンカチで紙だけを外す。

 さすがというか、慣れてるというか。
 みんな普通の高校生じゃない感じが、今さらながらすごい。