最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

「ほんとですよ」

「胡桃」

 先輩が私を見下ろす。
 その目は、答えを求めていた。

 どうしよう。
 告白されたなんて言ったら、空気がもっと大変なことになる気がする。
 でも黙るのも違う。

「えっと……いおりくんが、その……」

 私がしどろもどろになっていると。

「僕、先輩に告白しました」

 いおりくんがさらっと言った。

「……は?」

 空気が凍った。

 氷河ノ先輩の腕に、一瞬だけ力が入る。
 近くにいた蓮くんが「うわ」と小さくつぶやき、朔まで目を細めた。

「いおり、お前」

「本当のことですし」

 にこにこ笑ってる。
 でも全然可愛くない。
 こわい。

「先輩、ちゃんと返事はまだですから」

「返事!?」

 私が思わず叫ぶと、いおりくんはくすっと笑った。

「だって必要でしょ」

「今じゃなくない!?」

「今でもいいですけど」

「よくない!」

 すると氷河ノ先輩が、低い声で割って入った。

「……ふざけるな」

 その声に、今度は私のほうがびくっとした。

 先輩、怒ってる。
 かなり怒ってる。

「こんな場所で、こんな状況で言うことか」

「場所なんて関係ないですよ」

 いおりくんも笑顔のまま引かない。

「好きになったら伝えるだけです」

「胡桃を困らせてる」

「氷河先輩だって同じじゃないですか」

「……何?」

「過保護って名前で囲ってるくせに」

 その一言で、空気がぴんと張った。

「自分だけ特別みたいな顔してるの、ずるいです」

 やばい。
 これはやばい。
 絶対まずいやつ。

「ちょ、ちょっと待ってふたりともっ」

 私が慌てて間に入ろうとすると、蓮くんがさっと肩をつかんだ。

「胡桃ちゃん、今はやめとき」

「で、でも」

「火に油や」

 小声の忠告に、私はうっと詰まる。

 そのとき。
 廊下の奥で、何かが落ちる大きな音がした。

 全員の視線がそちらに向く。

「……誰かいる」

 朔の低い声。

 さっきまでの空気が、一瞬で戦闘態勢に変わった。

 氷河ノ先輩が私を背にかばう。
 いおりくんの目からも、さっきの甘さがすっと消えた。

 そして暗い廊下の先に、ゆっくり現れたのは――

 やさしく整った笑みを浮かべた、九条瑞希先輩だった。