最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

「可愛いって言っても、冗談だと思うし」

「そ、それは……」

「守りたいって言っても、後輩だからだって勘違いするし」

「う……」

「だからもう、ちゃんと言います」

 逃げ道をふさぐみたいに、いおりくんの腕が私の横についた。

「僕、先輩が好きです」

 真っ直ぐな告白。
 なのに、その奥には独占したい熱が見えた。

「誰にも渡したくないくらい」

「……っ」

 顔が熱い。
 心臓もうるさい。
 でも、それ以上に混乱していた。

「な、なんで今なの……?」

「今がいいからです」

「よくないよぉ……」

 思わず情けない声が漏れる。
 すると、いおりくんはふっと笑った。

「そういうとこ、ほんと好き」

「うぅ……」

「でも」

 いおりくんの笑顔が、また少しだけ冷たくなる。

「氷河先輩にばっかり守られてるのは気に入らないです」

「え……」

「九条先輩も怪しいし、朔さんも近すぎるし、鳳条先輩は距離感バグってるし」

 めちゃくちゃ見てる。
 やっぱりこの子、全部見てる。

「先輩の隣、みんな狙いすぎなんですよ」

「そ、そんなこと……」

「あります」

 きっぱり言われた。

「先輩だけが気づいてないだけ」

「……ええ」

 そんな。
 まさか。
 え、本当に?

 私が混乱していると、いおりくんは不意に顔を寄せた。

「試してみます?」

「な、何を」

「今ここで、僕が先輩を連れて逃げたら」

 ぞくっとする。

「氷河先輩、たぶん本気で怒りますよ」

「に、逃げません!」

「ですよね」

 いおりくんは楽しそうに笑った。

「だって先輩、氷河先輩のこと信じてる顔してるから」

「そ、そんな顔してないもん!」

「してます」

「してない!」

「じゃあ、今すぐここで僕と一緒に行けますか」

「い、行けない……」

「ほら」

 うう。
 言い返せない。

 そのとき、廊下の向こうから誰かの声が聞こえた。

「胡桃!」

 氷河ノ先輩だ。

 その瞬間、いおりくんの表情がすっと変わる。
 さっきまでの腹黒い熱を、きれいに隠す顔。

「……切り替え早いね」

 私が思わずつぶやくと、いおりくんはにこっと笑った。

「だって、可愛い後輩なので」

 そう言って、いおりくんは扉に手をかけた。

「でも、忘れないでくださいね」

 振り返ったその目だけは、やっぱり甘く黒い。

「僕もちゃんと、本気です」

 扉が開く。
 次の瞬間、強い力で腕を引かれた。

「胡桃!」

「ひゃっ」

 氷河ノ先輩が、私を自分のほうへ抱き寄せる。
 そのまま肩を引き寄せられて、私は先輩の胸元に閉じこめられた。

「無事か」

「だ、大丈夫ですっ」

「本当に?」

「ほ、ほんとに……」

 先輩の声が近すぎて、それだけで息が苦しくなる。

 でも氷河ノ先輩はすぐに、鋭い目でいおりくんを見た。

「何してた」

「別に?」

 いおりくんは、昼間みたいな無邪気な笑顔に戻っている。

「先輩が一人で危なかったから、隠してあげてただけです」

「……そうか」

 全然信じてない声だった。