「胡桃ちゃん、困ってへん?」
「えっ、えっと……」
困ってるような、困ってないような。
でも答えに詰まった、そのとき。
「近い」
氷河ノ先輩が蓮くんの額を片手で押し返した。
「冷たっ。なんやねん」
「うるさい」
「あーあ、氷河ばっかりずるいわ」
蓮くんは大げさに肩をすくめたあと、ふっと表情を変える。
「せやけど、気ぃつけや。昨日の件、あれで終わりやと思わんほうがええ」
「……わかってる」
氷河ノ先輩の声も低くなる。
やっぱり、二人は何か知ってる。
そう思った瞬間、校舎の二階からこちらを見下ろす視線を感じた。
見上げると、窓辺に立っていたのは九条先輩だった。
目が合った、気がした。
でも先輩はすぐに、やわらかく笑って手を振る。
「……っ」
ぞくりと、いやな寒気が走る。
「見るな」
また、氷河ノ先輩が私の視界をさえぎった。
「今は俺だけ見てろ」
「……へ?」
何その言い方。
心臓に悪すぎるんだけど!?
私が真っ赤になって固まっていると、蓮くんが吹き出した。
「氷河、お前ほんまわかりやすいな」
「黙れ」
「はいはい」
でも蓮くんの笑みも、どこか緊張を含んでいる。
きっと、本当に何かが動き始めているんだ。
そして放課後。
私の机の中には、また一枚の紙が入っていた。
知りたければ、今夜七時。旧資料棟へ。
昨日とは違う、整ったきれいな字。
そして、紙の端に小さく書かれていた一文字。
R
「……R?」
それが何を意味するのか、このときの私はまだ知らない。
でも、その紙を見た瞬間。
背後から伸びた手が、私の肩をそっと抱き寄せた。
「それ、俺にちょうだい」
耳元で落ちた低い声に、私はびくっと震えた。
氷河ノ先輩だった。
こんな近くで話さないで。
心臓がもたない。
「ひ、氷河ノ先輩……」
「今度は絶対、一人で行くな」
いつもより静かな声。
なのに、そこに混じる焦りが、かえって怖かった。
「これ、本気で危ない」
先輩の視線は、紙の隅の R に釘づけになっていた。
「えっ、えっと……」
困ってるような、困ってないような。
でも答えに詰まった、そのとき。
「近い」
氷河ノ先輩が蓮くんの額を片手で押し返した。
「冷たっ。なんやねん」
「うるさい」
「あーあ、氷河ばっかりずるいわ」
蓮くんは大げさに肩をすくめたあと、ふっと表情を変える。
「せやけど、気ぃつけや。昨日の件、あれで終わりやと思わんほうがええ」
「……わかってる」
氷河ノ先輩の声も低くなる。
やっぱり、二人は何か知ってる。
そう思った瞬間、校舎の二階からこちらを見下ろす視線を感じた。
見上げると、窓辺に立っていたのは九条先輩だった。
目が合った、気がした。
でも先輩はすぐに、やわらかく笑って手を振る。
「……っ」
ぞくりと、いやな寒気が走る。
「見るな」
また、氷河ノ先輩が私の視界をさえぎった。
「今は俺だけ見てろ」
「……へ?」
何その言い方。
心臓に悪すぎるんだけど!?
私が真っ赤になって固まっていると、蓮くんが吹き出した。
「氷河、お前ほんまわかりやすいな」
「黙れ」
「はいはい」
でも蓮くんの笑みも、どこか緊張を含んでいる。
きっと、本当に何かが動き始めているんだ。
そして放課後。
私の机の中には、また一枚の紙が入っていた。
知りたければ、今夜七時。旧資料棟へ。
昨日とは違う、整ったきれいな字。
そして、紙の端に小さく書かれていた一文字。
R
「……R?」
それが何を意味するのか、このときの私はまだ知らない。
でも、その紙を見た瞬間。
背後から伸びた手が、私の肩をそっと抱き寄せた。
「それ、俺にちょうだい」
耳元で落ちた低い声に、私はびくっと震えた。
氷河ノ先輩だった。
こんな近くで話さないで。
心臓がもたない。
「ひ、氷河ノ先輩……」
「今度は絶対、一人で行くな」
いつもより静かな声。
なのに、そこに混じる焦りが、かえって怖かった。
「これ、本気で危ない」
先輩の視線は、紙の隅の R に釘づけになっていた。



