最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

「図星か」

「……少しだけ」

「少しじゃないやろ」

 蓮くんが笑う。

 そのとき、校舎の角から誰かがこちらを見ている気配がした。
 振り向くと、一瞬だけ白いシャツの裾が消える。

「……?」

 今の、誰だろう。

 私が気になって目をこらすと、氷河ノ先輩がすっとその前に立った。

「見るな」

「え?」

「今は気にしなくていい」

 低い声。
 その横顔は、さっきまでとは違う緊張を帯びていた。

 ――やっぱり先輩、何か知ってる。

 そう思ったけれど、今の私はそこまで考える余裕がなかった。
 だって。

「行くぞ、胡桃」

 先輩が、ごく自然に私の手を取ったから。

「……へ?」

「はぐれると面倒だ」

「で、でも学校の中ですよ!?」

「だから何だ」

「何だじゃないです!」

 手、手、手!
 近いし熱いし無理無理無理!

 蓮くんが吹き出す。

「氷河、それ独占欲だだ漏れやで」

「黙れ」

「胡桃ちゃん、顔真っ赤やん」

「う、うるさいですっ!」

 もうやだ。
 なんでこんなことになってるの。
 潜入任務ってもっとこう、静かに情報を集める感じじゃなかったっけ!?

 だけど、握られた手は強引なのに、不思議なくらい安心した。

 その温度が、まだ少し怖い。
 でも嫌じゃないと思ってしまった時点で、たぶん私はもう遅いのかもしれない。

 そしてその夜。

 胡桃を呼び出した一件を、遠くから静かに見ていた人物がいた。

「やっぱり、予定より早いな」

 やわらかな声が、闇に溶ける。

「相沢胡桃。君は思った以上に厄介かもしれない」

 月明かりの下で微笑んでいたのは――
 学園中から信頼される、あの優しい優等生だった。