最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

「お前」

 男子が目を見開く。
 しまった。

 次の瞬間、低い声がその場を凍らせた。

「そこから手、離せ」

 全員がはっとして振り向く。

 建物の影から現れた氷河ノ先輩は、昼間よりずっと冷たい顔をしていた。
 その後ろには、蓮くんまでいる。

「うわ、やっぱ来てもうたか」

「鳳条先輩……っ」

 蓮くんは笑っているのに、目が全然笑っていない。

「女の子を寄ってたかって呼び出すとか、だっさ」

「ち、違っ……俺たちは別に……」

「別に何や」

 一歩近づいただけで、相手がびくっと震える。

 すごい。
 さっきまでへらへらしてたのに、今の蓮くん、めちゃくちゃ怖い。

「胡桃」

 氷河ノ先輩が私の前に立つ。
 それだけで、世界が遮られたみたいに安心してしまうのが悔しい。

「ケガしてないか」

「し、してません」

「本当に?」

「ほんとです」

 答えると、先輩はほっとしたようにわずかに息をついた。

「ならいい」

 その一言がやけにやさしくて、胸がきゅっとなる。

「お前ら」

 先輩が振り返る。
 空気が一変した。

「次、こいつに触れたら許さない」

 静かなのに、ぞっとするほど怖い声だった。

「……すみませんでした!」

 数人は青ざめて、逃げるように走り去っていく。
 あっという間に、その場はしんと静まり返った。

「いやぁ、間に合ってよかったわ」

 蓮くんが肩をすくめる。

「氷河が心配しすぎて、顔こわなってたで」

「うるさい」

「図星やん」

 軽口を叩きながらも、蓮くんはじっと私を見た。

「でもほんま、無事でよかった。胡桃ちゃん、案外むちゃするやろ」

「そ、そんなことないです」

「あるだろ」

 即座に氷河ノ先輩が返す。

「えぇ……」

「しかも今、手をひねろうとしたな」

「っ」

 どきりとする。
 見られてた。

「してません!」

「嘘つけ」

「してないです!」

「してた」

 うぅ。
 この人、全然ごまかされてくれない。

 蓮くんが面白そうに笑った。

「へえ。胡桃ちゃんって、見た目よりだいぶおもろい子なんやな」

「おもろいって何ですかぁ……」

「気ぃ強そうやし」

「そ、そんなこと……」

「ある」

 また氷河ノ先輩。
 なんでそんな断言するの。

 私がふくれると、先輩は小さく息をついてから、不意に私の頭に手を置いた。

「え」

「今日はもう帰るぞ」

「へっ」

「送る」

「ええっ!?」

 思わず大声が出た。

「い、いいです! 一人で帰れます!」

「さっきのあとで、一人にすると思うか?」

「う……」

「しかもお前、また何かあっても黙って抱え込むだろ」

 図星だった。
 私は視線をそらす。