最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

「うぅ……むり……」

 机に突っ伏したくなった、そのとき。

 こん、と小さな音がして、私の机に何かが置かれた。

「え?」

 顔を上げると、そこには小さく折りたたまれた紙。

 周りを見ても、誰が置いたのかわからない。
 私はそっとそれを開いた。

 放課後、旧校舎裏に来い。ひとりで。

「…………」

 え。
 なにこれ。

 心臓が、さっきとは別の意味でどくんと鳴った。

 旧校舎裏。
 どう考えても、楽しそうな場所ではない。
 というかむしろ、事件の匂いしかしない。

「どうした」

「ひゃっ!」

 気づけば、すぐ横に氷河ノ先輩が立っていた。

「こ、こ、氷河ノ先輩!?」

「声」

「だ、だっていきなり……!」

 先輩は私の手元をちらりと見て、そのまま紙を取り上げた。

「あっ」

 止める前に、先輩の視線が文面を読む。
 次の瞬間、その目がすっと冷えた。

「誰にもらった」

「わ、わかりません……気づいたら机にあって……」

「捨てろ」

「え?」

「行く必要ない」

 低く言い切られて、私は戸惑った。

「でも、もしかしたら黒幕の手がかりかも……」

「違うな」

「え?」

「ただの雑魚だ」

 ざ、雑魚。
 言い方が強い。

 先輩は紙をぐしゃりと握りつぶした。

「こういうのは大抵、群れてるやつが面白半分で呼び出してくるだけだ」

「で、でも……」

「ひとりで来いって書いてある時点で却下」

 その声には、いつもよりはっきり苛立ちが混じっていた。

 私のために怒ってくれてる。
 そう思ったら、少しだけ胸があたたかくなる。

 ……いやいや、のんびりしてる場合じゃない。

「でも、もし何か情報があったら困ります」

「行くなら俺も行く」

「それじゃひとりじゃなくなります!」

「だからだろ」

「へ?」

 氷河ノ先輩はあきれたように眉を寄せた。

「お前、本当に危機感ないな」

「う……」

「何があるかわからない場所に、一人で行かせるわけない」

 まっすぐそう言われて、言葉に詰まる。
 だって、その言い方、ずるい。

「先輩」

「なんだ」

「なんでそんなに過保護なんですか」

 思わず口に出してしまった。
 先輩は一瞬黙って、それからほんの少しだけ目を細める。

「お前が放っておけないから」

「……っ」

 またそれ。
 またそうやって、心臓に悪いことをさらっと言う。

「で、でもっ」

「まだ何か言うのか」

「……言います」

 負けじと見上げると、先輩は少しだけ驚いたような顔をした。
 でも私は引かない。だって私は、最強女総長なんだから。