最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

「危なっかしいし、放っておけない」

「み、見張るって何ですか!?」

「そのままの意味だ」

「いや意味わかんないです!」

「お前が隠し事してる間、俺がそばにいる」

「なんでそうなるんですか!?」

「決まってるだろ」

 氷河ノ先輩は少しだけ身をかがめて、逃げ場のない距離で私を見た。

「気になったからだ」

「……っ」

 言葉を失う。

 まっすぐすぎるその一言が、胸に変な熱を落としていく。

「それに」

 先輩は私のメガネをかけ直してやりながら、低く言った。

「もうバレた以上、お前を一人にする気はない」

 耳まで熱くなる。
 おかしい。
 絶対おかしい。

 これ、ただ正体を疑われてるだけの会話じゃない気がするのは、私の勘違いですか!?

「せ、先輩……距離、近いです」

「慣れろ」

「無茶です!」

「じゃあ今のうちに慣れとけ」

 さらっと何を言ってるの、この人。

 私が真っ赤になって固まっていると、氷河ノ先輩はふっと口元をゆるめた。
 初めて見る、その小さな笑みに、心臓がまた大きく跳ねる。

「胡桃」

「は、はいっ」

「逃げるなよ」

「に、逃げませんけど……!」

「ならいい」

 そう言って先輩は先に扉のほうへ歩き出した。
 でもその背中は、なぜか少しだけ楽しそうに見えた。

 私はその場に立ち尽くしたまま、熱い頬を両手で押さえる。

「な、なんなのぉ……」

 正体はバレるし。
 距離は近いし。
 意味深なことばっかり言うし。

 潜入任務、初日。

 まさかこんなに早く、最大級のピンチが来るなんて思ってなかった。

 ――でも。

 屋上の扉を開ける前、氷河ノ先輩がふと振り返る。

「あとひとつ」

「え?」

「お前が何を隠してても、俺はバラさない」

 その目は冗談じゃなく、本気だった。

「だから、困ったら俺を使え」

 そう言い残して、先輩は校舎の中へ消えていった。

 一人残された私は、しばらく動けなかった。

 胸がうるさい。
 頭も追いつかない。

 だけど、そんな私の知らないところで。

 氷河ノ仁はすでに、私の追う黒幕の名前に近づいていた。
 そしてその中心には、学園の誰も疑わないある人物がいることも――。