わたしはステージの中央でくるりと振り向いた。
「じゃあ、勝てるわけないって言った人から前に出て」
「は?」
わたしはステージの中央でくるりと振り向いた。
「じゃあ、勝てるわけないって言った人から前に出て」
「は?」
「え?」
「どういうこと?」
「負けるって思ってる顔のまま舞台に立ったら、ほんとに負けるから」
自分でも、ずいぶん強気だと思う。
でも、こういうときに誰かが引っぱらなきゃいけない。
「わたし、絶対にこのクラスを勝たせたい」
「なんでそこまで……」
小さな声でつぶやいたのは、後ろにいた女の子だった。
なんで。
その理由は、もう決まってる。
「悔しいから」
わたしは答える。
「せっかく同じクラスになったのに、最初から無理って決めつけるの、悔しい。まだ何も始まってないのに、落ちこぼれって笑われるのも悔しい」
自分でも少し驚くくらい、言葉はするすると出てきた。
「それに、みんな、ちゃんと光るもの持ってるよ。気づいてないだけで」
「……白雪さん」
「だから、わたしが見つける。引っぱり出す。舞台の上で、全員いちばん輝かせる」
気づけば、クラスのみんながこっちを見ていた。
疑っている子もいる。
半信半疑の子もいる。
でも、ほんの少しだけ目の奥に灯りがある。
それで十分だった。
「桜井くん」
「なんだ」
「演出、手伝ってくれる?」
「最初からそのつもりだ」
間髪入れず返されて、わたしは目を丸くする。
「え」
「ただし」
桜井くんは、客席からステージに向かってまっすぐ言った。
「中途半端なら切る。泣き言を言うやつもいらない。本気で勝ちたい人間だけ残れ」
「厳し……」
「でも、そういうの嫌いじゃないかも」
「ちょっと燃える」
空気が、また少しだけ変わる。
桜井くんはわたしを見上げた。
「白雪。おまえが役者を変えるなら、俺は舞台を変える」
「……うん」
「本当にやれるんだな」
「やるよ」
言った瞬間、緊張より先にわくわくがこみあげてきた。
ああ、始まるんだ。
落ちこぼれクラスの下剋上が。
みんなで舞台をひっくり返す、本気の三週間が。
わたしは笑って、両手を広げた。
「じゃあ、特訓開始です!」
その瞬間。
きゅるるるるる、と、ものすごく元気な音が劇場中に響いた。
……わたしのおなかだった。
数秒の沈黙のあと、誰かが吹き出す。
「え、今の白雪さん?」
「タイミング完璧すぎるでしょ」
「天才なのに締まらない!」
桃園えるちゃんがけらけら笑いながら、お菓子の袋を差し出してくる。
「はい、小春ちゃんこれ食べる?」
「えるちゃん大好き!」
「現金!」
わあっと笑いが広がった。
その笑い声を聞きながら、わたしはお菓子を受け取る。
うん。悪くない。たぶん、すごくいい始まりだ。
「え?」 「どういうこと?」
「負けるって思ってる顔のまま舞台に立ったら、ほんとに負けるから」
自分でも、ずいぶん強気だと思う。
でも、こういうときに誰かが引っぱらなきゃいけない。
「わたし、絶対にこのクラスを勝たせたい」 「なんでそこまで……」
小さな声でつぶやいたのは、後ろにいた女の子だった。
なんで。
その理由は、もう決まってる。
「悔しいから」
わたしは答える。
「せっかく同じクラスになったのに、最初から無理って決めつけるの、悔しい。まだ何も始まってないのに、落ちこぼれって笑われるのも悔しい」 自分でも少し驚くくらい、言葉はするすると出てきた。
「それに、みんな、ちゃんと光るもの持ってるよ。気づいてないだけで」 「……白雪さん」 「だから、わたしが見つける。引っぱり出す。舞台の上で、全員いちばん輝かせる」
気づけば、クラスのみんながこっちを見ていた。
疑っている子もいる。
半信半疑の子もいる。
でも、ほんの少しだけ目の奥に灯りがある。
それで十分だった。
「桜井くん」 「なんだ」 「演出、手伝ってくれる?」 「最初からそのつもりだ」
間髪入れず返されて、わたしは目を丸くする。
「え」 「ただし」
桜井くんは、客席からステージに向かってまっすぐ言った。
「中途半端なら切る。泣き言を言うやつもいらない。本気で勝ちたい人間だけ残れ」 「厳し……」 「でも、そういうの嫌いじゃないかも」 「ちょっと燃える」
空気が、また少しだけ変わる。
桜井くんはわたしを見上げた。
「白雪。おまえが役者を変えるなら、俺は舞台を変える」 「……うん」 「本当にやれるんだな」 「やるよ」
言った瞬間、緊張より先にわくわくがこみあげてきた。
ああ、始まるんだ。
落ちこぼれクラスの下剋上が。
みんなで舞台をひっくり返す、本気の三週間が。
わたしは笑って、両手を広げた。
「じゃあ、特訓開始です!」
その瞬間。
きゅるるるるる、と、ものすごく元気な音が劇場中に響いた。
……わたしのおなかだった。
数秒の沈黙のあと、誰かが吹き出す。
「え、今の白雪さん?」
「タイミング完璧すぎるでしょ」
「天才なのに締まらない!」
桃園えるちゃんがけらけら笑いながら、お菓子の袋を差し出してくる。
「はい、小春ちゃんこれ食べる?」
「えるちゃん大好き!」
「現金!」
わあっと笑いが広がった。
その笑い声を聞きながら、わたしはお菓子を受け取る。
うん。悪くない。たぶん、すごくいい始まりだ。
「じゃあ、勝てるわけないって言った人から前に出て」
「は?」
わたしはステージの中央でくるりと振り向いた。
「じゃあ、勝てるわけないって言った人から前に出て」
「は?」
「え?」
「どういうこと?」
「負けるって思ってる顔のまま舞台に立ったら、ほんとに負けるから」
自分でも、ずいぶん強気だと思う。
でも、こういうときに誰かが引っぱらなきゃいけない。
「わたし、絶対にこのクラスを勝たせたい」
「なんでそこまで……」
小さな声でつぶやいたのは、後ろにいた女の子だった。
なんで。
その理由は、もう決まってる。
「悔しいから」
わたしは答える。
「せっかく同じクラスになったのに、最初から無理って決めつけるの、悔しい。まだ何も始まってないのに、落ちこぼれって笑われるのも悔しい」
自分でも少し驚くくらい、言葉はするすると出てきた。
「それに、みんな、ちゃんと光るもの持ってるよ。気づいてないだけで」
「……白雪さん」
「だから、わたしが見つける。引っぱり出す。舞台の上で、全員いちばん輝かせる」
気づけば、クラスのみんながこっちを見ていた。
疑っている子もいる。
半信半疑の子もいる。
でも、ほんの少しだけ目の奥に灯りがある。
それで十分だった。
「桜井くん」
「なんだ」
「演出、手伝ってくれる?」
「最初からそのつもりだ」
間髪入れず返されて、わたしは目を丸くする。
「え」
「ただし」
桜井くんは、客席からステージに向かってまっすぐ言った。
「中途半端なら切る。泣き言を言うやつもいらない。本気で勝ちたい人間だけ残れ」
「厳し……」
「でも、そういうの嫌いじゃないかも」
「ちょっと燃える」
空気が、また少しだけ変わる。
桜井くんはわたしを見上げた。
「白雪。おまえが役者を変えるなら、俺は舞台を変える」
「……うん」
「本当にやれるんだな」
「やるよ」
言った瞬間、緊張より先にわくわくがこみあげてきた。
ああ、始まるんだ。
落ちこぼれクラスの下剋上が。
みんなで舞台をひっくり返す、本気の三週間が。
わたしは笑って、両手を広げた。
「じゃあ、特訓開始です!」
その瞬間。
きゅるるるるる、と、ものすごく元気な音が劇場中に響いた。
……わたしのおなかだった。
数秒の沈黙のあと、誰かが吹き出す。
「え、今の白雪さん?」
「タイミング完璧すぎるでしょ」
「天才なのに締まらない!」
桃園えるちゃんがけらけら笑いながら、お菓子の袋を差し出してくる。
「はい、小春ちゃんこれ食べる?」
「えるちゃん大好き!」
「現金!」
わあっと笑いが広がった。
その笑い声を聞きながら、わたしはお菓子を受け取る。
うん。悪くない。たぶん、すごくいい始まりだ。
「え?」 「どういうこと?」
「負けるって思ってる顔のまま舞台に立ったら、ほんとに負けるから」
自分でも、ずいぶん強気だと思う。
でも、こういうときに誰かが引っぱらなきゃいけない。
「わたし、絶対にこのクラスを勝たせたい」 「なんでそこまで……」
小さな声でつぶやいたのは、後ろにいた女の子だった。
なんで。
その理由は、もう決まってる。
「悔しいから」
わたしは答える。
「せっかく同じクラスになったのに、最初から無理って決めつけるの、悔しい。まだ何も始まってないのに、落ちこぼれって笑われるのも悔しい」 自分でも少し驚くくらい、言葉はするすると出てきた。
「それに、みんな、ちゃんと光るもの持ってるよ。気づいてないだけで」 「……白雪さん」 「だから、わたしが見つける。引っぱり出す。舞台の上で、全員いちばん輝かせる」
気づけば、クラスのみんながこっちを見ていた。
疑っている子もいる。
半信半疑の子もいる。
でも、ほんの少しだけ目の奥に灯りがある。
それで十分だった。
「桜井くん」 「なんだ」 「演出、手伝ってくれる?」 「最初からそのつもりだ」
間髪入れず返されて、わたしは目を丸くする。
「え」 「ただし」
桜井くんは、客席からステージに向かってまっすぐ言った。
「中途半端なら切る。泣き言を言うやつもいらない。本気で勝ちたい人間だけ残れ」 「厳し……」 「でも、そういうの嫌いじゃないかも」 「ちょっと燃える」
空気が、また少しだけ変わる。
桜井くんはわたしを見上げた。
「白雪。おまえが役者を変えるなら、俺は舞台を変える」 「……うん」 「本当にやれるんだな」 「やるよ」
言った瞬間、緊張より先にわくわくがこみあげてきた。
ああ、始まるんだ。
落ちこぼれクラスの下剋上が。
みんなで舞台をひっくり返す、本気の三週間が。
わたしは笑って、両手を広げた。
「じゃあ、特訓開始です!」
その瞬間。
きゅるるるるる、と、ものすごく元気な音が劇場中に響いた。
……わたしのおなかだった。
数秒の沈黙のあと、誰かが吹き出す。
「え、今の白雪さん?」
「タイミング完璧すぎるでしょ」
「天才なのに締まらない!」
桃園えるちゃんがけらけら笑いながら、お菓子の袋を差し出してくる。
「はい、小春ちゃんこれ食べる?」
「えるちゃん大好き!」
「現金!」
わあっと笑いが広がった。
その笑い声を聞きながら、わたしはお菓子を受け取る。
うん。悪くない。たぶん、すごくいい始まりだ。



