尊い推しに溺愛されてます!? 【続編】

その日の放課後。
 人の少ない視聴覚室に呼ばれて、私はそわそわしながら扉を開けた。

「レンくん?」
 
「こっち」

 カーテンの隙間から差しこむ夕日が、彼の横顔をやわらかく照らしている。
 きれいで、見とれてしまう。

「どうしたの?」

「会いたくなった」

「さっきまで一緒だったのに?」

「それでも」

 そう言って、レンくんは私の腕を引いた。
 ふわっと胸に閉じこめられる。

「っ、レンくん……」

「今日ずっと我慢してた」

「我慢?」

「抱きしめるの」

 低い声が近くで響いて、全身が熱くなる。

「みう、いい匂いする」

「そ、そんなこと言わないで……」

「なんで?」

「恥ずかしいから……」

「俺は好き」

 背中に回った腕に、少し力がこもる。
 苦しくないのに、離れられないくらい優しい抱きしめ方だった。

「ほんとに好き」

「……うん」

「推しとか関係なく、みうが好き」

「私も……好き」

 言い終わった瞬間、レンくんが肩口に顔を埋める。

「だめだ。好きが増える」

「なにそれ……」
 「毎日更新されてく」

 思わず笑うと、彼は満足そうに目を細めた。

「今の顔もかわいい」

「またそれ……」

「だって本当だし」

 そしてレンくんは、そっと私の頬に触れた。

「みう」

「……なに?」

「次は、キスしてもいい?」

 まっすぐ見つめられて、逃げることなんてできない。
 私は真っ赤になりながら、小さくうなずいた。

 すると彼は、壊れものに触るみたいに優しく私の額にキスを落とした。

「……へ?」

「今日はここまで」

「い、いまの……」

「本当は足りない」

 レンくんは少し意地悪に笑う。

「でも、続きはまた今度」

「ずるい……!」 

「みうが可愛すぎるのが悪い」

 推しだったはずの人は、もう遠い存在じゃない。
 私だけに甘く笑って、私だけを欲しがってくれる彼氏になった。

 だけどたぶん。
 レンくんの溺愛は、まだまだこんなものじゃない。

 だって帰り際、手をつないだまま彼は私の耳元でこう言ったから。

「今度のデート、覚悟して。もっと甘やかすから」

 その一言で、私はまた真っ赤になる。

 尊い推しに溺愛されてます!?
 この恋、しんどいくらい幸せです。