小さく呟いて、渡辺先生はそのまま、職員室のほうへ歩いていった。
背中に、冷たいものがすっと落ちた気がした。
その場を離れようとしたとき、廊下の向こうから、藤原先生が歩いてきた。
渡辺先生とすれ違いざま、何か短く言葉を交わしている。二人の視線が一瞬、こちらに向いた気がした。
「椎名さん」
藤原先生が、こちらへやって来た。
今度こそ、何か言われる。身構えて、息を止める私。
「明日のホームルームで、ちょっと大事なお知らせがあるから。寝坊しないようにね」
「……え?」
大事なお知らせ?
「最近の椎名さん、ちょっと元気ないみたいだから心配で。無理しないでね」
それだけ言うと、先生はあっさりと去っていった。
拍子抜けした反動で、詰めていた息がどっと漏れる。
今のは、なんでもない、連絡事項だったんだろうか。それとも──渡辺先生と話していたことと、何か関係があるんだろうか。
答えが出ないまま、その日はもやもやした気持ちを抱えて、帰り支度をした。



