【十二位、椎名琴葉】
十二位……。
普段の琴葉なら、一位か、二位。十二位という数字は、明らかにいつもと違う。
それでも、平均点に届かなかった最初の小テストのことを思うと、信じられないくらいの伸びだった。
「椎名さん、十二位だって? すごいじゃん!」
北条さんが、飛びついてくる。日和ちゃんも、隣で嬉しそうに手を叩いていた。
けれど、私は素直に喜べなかった。
これは、私が取った点数だ。夜遅くまで教科書にしがみついて、自分の力で勉強して答えた結果。本当なら、胸を張って誇っていいはずなのに。
でも、掲示板に書かれているのは『椎名琴葉』の名前だ。この数字は、私のものじゃなく、琴葉の記録としてずっと残っていく。
留学の選考をする先生たちは、この『十二位』を見て何を思うだろう。
いつもより低い順位に、首を傾げるかもしれない。『体調不良の中でも頑張った』と、評価してくれるかもしれない。
努力が実った嬉しさと、妹の邪魔をしてしまった申し訳なさが、胸の中で激しく押し合っている。
この数字は、私のものでも琴葉のものでもなく、行き場のない場所に、ぽつんと貼り出されている気がした。
「あら」
数学の渡辺先生が、掲示板の前で足を止めた。
答案の束を抱えたまま、私の名前のところをじっと見つめている。それから、手元の答案用紙を一枚、めくった。
私が書いた、証明問題の答案。琴葉のいつもの字とは少し違う、丸みのある字。
先生はしばらく、答案と掲示板を見比べていた。
「……なるほど」



