身代わり特待生、はじめました。~双子の妹のフリして、御曹司に恋してます~


一秒。二秒。長い沈黙。

──もういいや。

ふと、そう思った。

「My favorite thing is……running」(私の好きなことは……走ることです)

自分の口から、思いがけない言葉が、こぼれ出た。

「I run very fast. When I run, I feel free. I don't need to think about anything. I just run」(すごく速く走れます。走っているときは、自由な気持ちになります。何も考えなくていい。ただ、走るだけです)

文法なんて、めちゃくちゃだったと思う。単語も、簡単なものばかり。

でも、言葉は、次から次へと、勝手に出てきた。

体育館の壁。フリースロー。夕方の校庭。走っているときだけ、私は私でいられること。

「……そうですか」

先生は驚いた顔をして、それからふっと笑った。

「椎名さん。初めて、自分の言葉で話しましたね」

その一言に、目の奥がつんと熱くなった。

◇

期末テスト終了から一週間後。テストの結果が、掲示板に貼り出された。

【一位、宮川紬】

学年順位を、上から目で追っていく。

私は何位だろう……あ、あった。