身代わり特待生、はじめました。~双子の妹のフリして、御曹司に恋してます~


期末テスト初日。英語のスピーキングテストの時間。

廊下に並んだ椅子で、順番を待つ。心臓が、いつもと違う音を立てている。

前の生徒が、面接室から出てくる。緊張の抜けた顔で、友達のところへ駆けていった。次は、私の番だ。

覚えてきた例文は、頭の中に、ちゃんとある。

『わたしの好きなことは、読書です』

琴葉が、いつも読んでいそうな模範解答っぽい文章。昨日の夜、何度も練習した。

膝の上で、手のひらを開いたり閉じたりする。汗がじわりとにじんだ。

心の中で、一、二、三と数を数える。フリースローのときと、同じだ。十まで数えると、少しだけ呼吸が整った。

『話すのは、彩葉ちゃんなんだから』

昨夜の琴葉の声が、耳の奥でもう一度聞こえた。

「椎名さん、どうぞ」

名前を呼ばれて、面接室に入る。先生が二人、机の向こうに座っていた。

「では、始めましょう。あなたの好きなことについて、一分間、話してください」

「はい」

深呼吸をひとつ。覚えてきた文章を、口に出す。

「My favorite thing is……」(私の好きなことは……)

そこで、止まった。

『reading(読書)』のあとが、出てこない。頭の中が、真っ白になる。

先生が、心配そうに、こちらを見た。

「椎名さん? 大丈夫ですか」

大丈夫じゃない。だって、これは、私の言葉じゃないから。