売店でノートとペンを買って戻ると、琴葉はベッドの上で、ものすごい勢いで何かを書きはじめた。
倒れたその日のうちに、こんなことを始めるなんて。さすがは琴葉だ。
それから夜になって、両親が病室に駆けつけた。
琴葉の顔を見て、二人はほっと息をついた。けれど、私と琴葉が一緒に事情を話した途端、病室の空気は、ぴんと張りつめた。
「……彩葉。今、なんて言ったの?」
母は、ぴたりと動きを止めた。笑っていない目だった。父も、腕を組んだまま黙っている。
「琴葉のフリをして、学校に行くって言ったの」
「彩葉。それ、本気で言ってる? 慣れない学校に、一ヶ月半も放り込まれるのよ?」
「わかってる」
「あなたの中学生活を犠牲にしてまで、やることじゃないでしょう」
母は一気にそう言うと、少し声を落とした。
「それに、彩葉が無理をしすぎて、体調を崩したら? お母さんたちは、琴葉のことだけじゃなくて、あなたのことも守らなきゃいけないの」
母の言葉はどれも正論で、返す言葉に詰まりそうになる。でも、私は顔を上げた。
「……大丈夫。変なところで、目立たないように気をつけるから」
私は、母の目をまっすぐ見つめる。



