翌朝。目が覚めてすぐ、スマホを確認した。
昨夜、美咲に教えてもらった投稿は、いいねが三つ増えただけだった。コメントもない。
美咲に、そっと『これ、消してもらうこと、できる?』と頼むと、すぐに、『え、いいけど、なんで? まあ、消すよう頼んでおくね』と、返事が来た。
ほっと、息をつく。ひとまずは、大丈夫そうだ。
それでも、あの投稿を見たときの、地面が抜けるような感覚は、しばらく胸の奥に居座り続けていた。
期末試験まで、あと十日。
夕食のあと、私と琴葉は、琴葉の部屋の勉強机に並んで向かっていた。
窓の外は、もう真っ暗だ。扇風機の首振りが、かたん、かたんと、規則正しい音を立てている。
琴葉が退院してから、これが毎晩の日課になった。私が学校から持ち帰った問題集を広げ、琴葉が隣で教えてくれる。
「ここ、なんでこうなるの?」
私が指さしたページを、琴葉がのぞきこんだ。
「うーんとね。この公式、丸暗記しようとするから、分からなくなるんだと思う」
琴葉は、ノートの隅に小さな図を描き始めた。三角形と、その中を通る点線。
「彩葉ちゃんって、バスケのシュートを狙うとき、角度とか考えてたでしょう」
「え、まあ、なんとなく」
「それと、同じだよ。この式も、『なぜ、この形になるのか』が分かれば、覚えなくていいの」
点線が、するすると伸びて、答えにたどり着く。魔法みたいだった。
「……あ、分かった、かも」



