その日から、学校の中での私は少しだけ変わった。
廊下ですれ違う生徒に、「体育祭、かっこよかったよ」と声をかけられたり。休み時間には、女子の輪に自然と混ざれるようになった。
クラスメイトの望月くんには、「今度、テニス部の助っ人に来てよ。反射神経、生かせると思うんだよね」と、冗談まじりに誘われた。
「あ、あはは、考えとく」
「マジで、待ってるからな」
軽い調子のはずなのに、最後の一言だけ妙にまっすぐだった。
リレーで足首をひねった宮川さんは、松葉杖をついて、階段の上り下りに苦労していた。
「病院で、靭帯が少し伸びてるって言われたの。しばらく、これのお世話になるわ」
そう言って、松葉杖を軽く持ち上げてみせた紬さんの額には、うっすら汗がにじんでいた。
私は彼女の荷物を持って、教室まで一緒に歩いた。
「借りは、いつか返すわ」
宮川さんは、窓の外に目をやったまま、そう言った。それから、少しためらうように付け足した。
「……いつまでも、『宮川さん』って、他人行儀じゃない? あたしのことは、紬でいいわ」



