美咲は琴葉のことも知ってるから、見られたらまずい。
「し、してない、してない!」
「そうかな? ふわふわしたものが、動いた気が──」
「ぬ、ぬいぐるみ! 寝るときに、抱っこしてるの!」
「へえ、彩葉が、ぬいぐるみ? 珍しい」
「今は、そういう気分なの!」
美咲はしばらく、不思議そうに私の顔を見つめていた。それから、にかっと笑った。
「そっか。具合が悪いときは、そういうのもいいよね」
……セーフ。
布団の中で、ウィッグを両手で押さえつける。手のひらが、じっとりと、汗ばんでいた。
美咲は、それからしばらく、部活の噂話やクラスの近況を、楽しそうに話してくれた。
いつもと変わらない、ただの放課後の延長みたいな時間だった。
「じゃあ、そろそろ帰るね。長居すると、彩葉が疲れちゃうから」
美咲は立ち上がって、ドアに手をかけた。それからふと、振り返った。
「あ、そうだ、彩葉」
「なに?」
「そういえばさ、昨日、部活の子が、明凰学園の最寄り駅の近くで、彩葉にそっくりな子を見たって言ってたの」
「え?」
予想外の言葉に、血の気がすっと引いた。
「明凰の制服着てたから、妹の琴葉ちゃんかなって思ったんだけど、その子、『髪が短かった』って。しかも、写真まで撮ったんだって」
美咲は、笑いながら続ける。



