『彩葉、早く元気になってね!』
『休み時間、彩葉がいないと、つまんない!』
『フリースロー勝負、まだ決着ついてないぞ!』
見慣れた友達の字が、次々と目に飛びこんでくる。
喉の奥が、つまった。
私は、嘘をついている。元気なのに、寝込んでいるフリをして、みんなを騙している。それなのに、みんなはこんなに心配してくれている。
「……ありがとうございます」
今度は、演技じゃなかった。声が本当に震えた。
「バスケ部の顧問の先生も、気にかけていたよ。夏の大会までには、戻れるといいね」
夏の大会。
琴葉の選考の日は、七月の終わり。大会も、ちょうど同じ頃だ。……間に合うのかな。
考えたら、ため息がこぼれた。
「はい。……頑張ります」
先生は優しく微笑み、「無理はしなくていいんだよ」と、もう一度言った。
◇
先生が一階に下りていったあと、私はしばらく色紙を眺めていた。
みんなの字を見ていたら、なんだかじっとしていられなくなった。
……そうだ、ウィッグ。
昨日の雨で、三つ編みがほつれてしまっている。琴葉の大事な髪型を、あのままにはしておけない。
クローゼットの奥から箱を取り出して、膝の上にのせる。ブラシで、丁寧に髪をとかしていく。
すう、と毛先が整うたびに、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。
一階から、父と山口先生の笑い声が聞こえる。
そのとき。
トントントン、と、階段を上がってくる軽い足音がした。
「彩葉ー、入るよー!」
聞き覚えのある、元気な声。
──もしかして、美咲!?



