午後二時。玄関のチャイムが、ピンポーンと鳴った。
「はーい」
母が、階段を下りていく。私は布団にもぐって、目を閉じた。手のひらに、汗がにじむ。
「わざわざ、ありがとうございます。どうぞ、お上がりください。うつる病気ではないんですけど、咳がなかなか抜けなくて」
「いえいえ。彩葉さんの具合は、いかがですか」
聞き慣れた、担任の山口先生の声だ。親しみやすい三十代の男性。
階段を上がる足音が二人分、近づいてくる。
──コンコン。
「彩葉さん、入るよ」
「……はい」
わざと弱々しい声で返事をすると、ドアが開いて、山口先生が顔をのぞかせた。
「具合は、どうだい?」
「あ、先生……ごほっ、ごほっ。まだ、咳が止まらなくて。なんだか、ずっとだるくて……」
私は、力いっぱい咳をする。先生の後ろで、母が困ったように小さく笑っているのが見えた。
「無理しなくていい。ゆっくり休みなさい」
先生は優しい声で言って、ベッドのそばの椅子に腰かけた。
「みんな、心配していたよ。部活の仲間も、クラスの友達も。これ、預かってきたんだ」
カバンから、大きな色紙が出てくる。
色とりどりのペンで、たくさんのメッセージが書かれていた。



