私は小指を立てて、琴葉の前に差し出した。
「約束ね。四十五日たったら、ちゃんと元気になって、自分の足で学校に戻ること」
琴葉は目をぱちぱちさせて、それから、ふっと笑った。
「……うん。約束」
二人の小指が、絡んだ。泣き顔のままの笑いは、ちょっと変な顔だったけれど、それでも、数時間ぶりに見る、妹らしい表情だった。
「あ、そうだ。私の演技力、期待しないでよね。学芸会でも、下手すぎて笑われたんだから」
「知ってる。ずっと見てたもん」
窓の外で、初夏の風が、病室のカーテンを揺らしていた。
◇
「彩葉ちゃん、もう一つだけ、お願いしてもいい?」
琴葉が、私の袖を引いた。
「売店で、ノートを一冊、買ってきてほしいの。学校のこと、彩葉ちゃんにまとめて渡したいから」
「今から? あんた、さっき倒れたばっかりでしょ」
「今だから、だよ」
売店に向かう途中、私は迷ってしまった。似たような廊下が続く、広い病院だ。
ナースステーションで道を聞こうとして、きょろきょろしていると、後ろから、声をかけられた。
「あの……もしかして、迷った?」
振り返ると、白いシャツに、紺のスラックスの男の子が、立っていた。制服らしき上着を、肩にかけている。歳は、私と同じくらいだろうか。
黒い短髪に、涼しげな目元のイケメンさん。



