朝から何も食べていないことに、今さら気づいた。ラップの包みを二つ、取り出す。
「お腹、すいてない? これ、良かったら食べる?」
「……何、それ」
「おにぎり。お母さんが、持たせてくれたの」
加賀見くんは、しばらく私の手のひらを見つめていた。
「シェフの弁当じゃなくて?」
「食べそびれたの。……いらなかったら、全然」
「いる」
短く言って、加賀見くんが一つ受け取る。テントの支柱にもたれて、ラップをはがして、一口かじった。
「……っ」
どうやら、梅干しに当たったらしい。
「……しょっぱい」
「梅だもん」
「でも、美味い」
言葉少なに、もうひとくち。夕日が、その横顔を赤く染めていた。
並んでおにぎりを食べる私たちは、はたから見たらどんな光景なんだろう。
食べ終えると、加賀見くんはラップを、几帳面に小さく畳んだ。
「去年の体育祭。椎名さんは、リレーで最下位だった」
心臓が、止まったかと思った。
「俺、それをずっと見てた。だから、覚えてる。今日の走りは、去年の椎名さんと、全然違った」
声が出なかった。夕方の風が、二人の間を吹き抜けていく。
……もしかして、今度こそバレた?



