前を走る第一コースのアンカーに、一歩、また一歩とみるみる縮まっていく距離。
最後の直線に入った瞬間、二人の肩が並んだ。
相手も意地で見開いた目で食い下がる。けれど、加賀見くんの足は緩まない。
雨粒を振り払うように一歩を深く踏みこむと、一瞬で頭ひとつ抜け出した。
圧倒的だった。彼の姿から、目が離せなかった。
──加賀見くん、かっこいい。
喉の奥が熱くなって、胸がぎゅっと締めつけられた。
嘘も、役目も、ウィッグの重さも忘れて、ただの一人の女の子として、そう思ってしまった自分に気づいた。
バンっ、と真っ白なゴールテープが胸で弾ける。
二年A組、一位。
「やったあああ!」
歓喜の悲鳴が上がり、クラスのみんながわっと加賀見くんのほうへ駆けていく。
私も息を弾ませて笑顔になりかけて──慌てて頭を押さえた。
ウィッグが、大きく斜めにずれている。
まずい。みんなが、こっちに来るのに。



