「ちゃんと飲んでから、話せ」
加賀見くんの言い方はぶっきらぼうなのに、あらかじめキャップが少しゆるめられていることに気づいて、胸が小さく跳ねた。
ボトルを口に含むと、冷たい液体が喉を通っていく。生き返る、というのはきっと、こういう感じだ。
膝の震えが、ゆっくりおさまっていく。顔を上げると、グラウンドのあちこちで、応援席の生徒たちが立ち上がって、隣の席の子と話しこんでいた。
私が走った跡が、さざ波みたいに、グラウンド中へ広がっていく。
「助かった。ありがとう」
加賀見くんはそう言って、しばらく黙っていた。そして、その目が一瞬、私の三つ編みの根元に止まった。
「椎名さんって、前からそんなに足、速かったっけ」
軽い調子の質問だったけど、彼の目は笑っていない。



