琴葉のクラス、二年A組の席では、望月くんが、ストレッチの手を止めた。
「リレーが先!? 了解! 俺、第一走者だから、先にウォームアップしてくる!」
「お願い!」
次の席へ、その次の席へ。三年生の席の前を駆け抜けると、先輩たちが、驚いた顔で道を開けてくれた。
息が、喉を焼く。それでも、足を止めたくなかった。
応援団の席で、日和ちゃんが立ち上がった。
「琴葉!?」
目を見開いて、何か言いたそうに口を開く。──そして、閉じた。
「……リレーが、先になるの?」
「そう! あとで、ちゃんと説明する!」
「分かった。みんなに伝えとく」
日和ちゃんは、それ以上、何も聞かなかった。ただ、にっと笑って大きくうなずいた。
その一言だけで、足がもう一段、軽くなった。
最後のクラスに伝え終えて、振り返ると、雲はさっきよりずっと低く降りてきていた。
時計を見ると、三分四十秒。……ちょっと、オーバーだ。
◇
本部のテントに戻ったとき、私は膝に両手をついて、肩で息をしていた。
「お、終わった……よ」
「飲め」
目の前に、ペットボトルが突き出された。ラベルには、『経口補水液』とある。



