「でも、順番を変えるなんて、先生が許してくれる?」
「変更案は三つ、用意してある」
加賀見くんはもう一枚、進行表を取り出した。A案、B案、C案。雨雲の動きに合わせた新しい順番が、びっしり書きこまれている。
「いつの間に?」
「昨日の夜。天気予報が、怪しかったから。熱中症も雨も、起きてからじゃ遅いんだ。先に手を打っておけば、誰も倒れずに済む」
加賀見くんは、進行表に目を落としたまま付け足した。
「去年の閉会式で、一年生が一人、ふらふらになったんだ。そのとき俺、何もできなかった」
それきり黙って、彼は紙の端を指でぎゅっと押さえていた。
『うち、病院だから』
あの言葉が、耳の奥でもう一度、響く。
加賀見くんは、先生のところへ走って、C案を丁寧に説明した。リレーと応援合戦を、雨の前に済ませる。昼休みは、そのあと。
先生は腕を組んで、しばらく進行表を見ていた。隣にいたもう一人の先生と、小声で何か話し合っている。
「本当に、間に合うのか?」
「A案、B案も、用意してあります。天候次第で、切り替えます」
加賀見くんは、迷わず答えた。
先生は進行表と空を交互に見比べ、やがて大きくうなずいた。
「分かった。君に任せよう」
「バトンは、あたしが出しておくわ」
いつの間にか、生徒会の腕章をつけた宮川さんが隣に立っていた。



