身代わり特待生、はじめました。~双子の妹のフリして、御曹司に恋してます~


進行は、順調だった。競技が終わるたびに、用具係の子たちが、五メートルおきに並んで、道具を手渡しで回していく。

あの水曜と木曜の、砂まみれの放課後が今、目の前で形になっている。

保護者席では、着飾った家族連れが、日傘の下で我が子の姿を探していた。

大きなカメラ。花束。ここにお母さんがいたら、レジャーシートの上で、あのおにぎりを広げていたんだろうな。

カバンの底に、おにぎりの重みがある。今日の私を、家から送り出してくれた、二つ分の重さだ。

「すごいな。予定より、三分も早い」

「でしょ?」

得意になってうなずいたとき、加賀見くんが、スマホを見つめたまま眉をひそめた。

「……まずいな」

隣から彼のスマホを覗き込むと、画面には雨雲のレーダー。校庭の真上に、雲の塊がじわじわと近づいている。

「予報より、早い。昼前に降りだす」

「え、じゃあ、リレーは? 午後三時からだよね?」

「たぶん、間に合わない」

短く言って、加賀見くんは空を見上げた。灰色の雲の底が、さっきよりずっと暗く見える。

「リレーは、みんなが一番楽しみにしてる種目だ。中止にはしたくない」