身代わり特待生、はじめました。~双子の妹のフリして、御曹司に恋してます~


──応援用の、箱。

その言葉が、頭の中で、こつんと鳴った。

背中が、すっと冷たくなる。あの箱を棚の下に押しこんだのは、私だ。

気づいたときには、私は会議室を飛び出していた。

廊下を走り、階段を二段飛ばしで駆け下りる。

用具庫の扉は、開けっぱなしになっていた。

コーンの段ボール、予備のハチマキが入った箱、マットの裏。片っ端から覗いていくけれど、赤いバトンは、どこにもない。

──もし、どこにもなかったら、どうしよう。頭の中で、悪い想像ばかりが膨らんでいく。

棚の下の段に、這いつくばる。床の埃が、あちこち、手のひらの形にぬぐわれていた。

誰かが、ここに膝をついて何度も探した跡だ。

息が上がって、心臓がうるさいくらい鳴っている。

「……あ」

その、一番奥。棚と壁の、細い隙間。

暗がりに、赤くて細長いものが転がっていた。

私は腕を、精いっぱい伸ばす。

爪の先が、埃まみれの床をこする。あと少し、あと少し。

指先が、つるりとしたものに触れた。

ひっぱり出したバトンは冷たくて、思ったより重かった。

……見つかった。

立ち上がって、埃を払いながら、私は動けなくなった。