日曜をはさんで迎えた、週明けの月曜日。五時間目、数学の小テストが返ってきた。
午後の教室は、傾きかけた日差しで、ぼんやり白かった。チョークの粉が、光の中をゆっくり漂っている。
先生は、名前を呼ばない。一人ずつの机に、答案を裏返しに置いていくだけだ。
教室には、上履きの足音と、窓の外で揺れる木の葉の音しか聞こえない。
私の机の前で、足音が止まった。
おそるおそる、紙をめくる。右上に、赤い丸で囲まれた数字。
『51』
五十一。うちの中学なら「ちょっと勉強不足だね」と言われる程度の点数だ。
でも、この教室で「椎名琴葉」が五十一点を取ったとなれば、たぶん事件だ。
私は答案を小さく折りたたんで、教科書に挟んだ。
これは、私の点数なのに。名簿に残るのは、椎名琴葉の点数だ。琴葉が毎晩、余白がなくなるまで書きこんで積み上げてきたものを、私の五十一が、一行分、崩してしまう。
◇
帰りのホームルームが終わると、後ろの席から声がした。
「……五十一点」
振り向くと、宮川さんが自分の答案を伏せたまま、こちらを見ていた。冷たい目だった。だけど、責める声じゃなかった。
「次は、ちゃんと勉強してきなさい。あなたが崩れたら、張り合いがないじゃない」
それだけ言うと、宮川さんはカバンを持って、先に教室を出ていった。
言い返せなかった。今の言葉は私にじゃなく、琴葉に向けられたものだ。
宮川さんはずっと、「勝ちたい相手」として、琴葉を見ていたんだ。



