土曜日の午後。日和ちゃんに連れられて入ったお店は、絵本の中の喫茶店みたいだった。
ステンドグラスの窓から、色とりどりの光が、テーブルにこぼれている。奥では、誰かの弾くピアノが、静かに鳴っていた。
「いらっしゃいませ、椎名様、桜庭様。いつものお席へどうぞ」
いつもの……琴葉は本当に、ここの常連なんだ。
「お飲み物は、いつものアールグレイでよろしいですか?」
「は、はい」
琴葉のメッセージのとおりだ。心の中で、両手を合わせる。
やがて、三段のお皿が運ばれてきた。
いちばん下に、小さなサンドイッチ。真ん中に、焼きたてのスコーン。いちばん上に、宝石みたいなケーキ。
うわあ……食べたい……! ものすごく、上から食べたい。
でも、下の段から。呪文みたいに、心の中で唱える。下から、上へ。下から、上へ。
「……琴葉? なんか、ぶつぶつ言ってない?」
「言ってない!」
「言ってたよ。『下から、下から』って」
「……言ってました」
日和ちゃんが、こらえきれずに吹き出した。
「なんか、初めて来たみたいな顔してる。おかしい」
柑橘みたいな紅茶の香りが、湯気といっしょに立ちのぼる。
サンドイッチを一つ食べ終えたところで、日和ちゃんはカップを両手で包んだまま、ゆっくり口を開いた。



