ここに座っているのは、その琴葉じゃなくて姉の私なのに。本物の琴葉は、今ごろ病室で、点滴の落ちる音を聞いているのに。
胸の奥で、何かがちりっと痛んだ。
心配されているのは私じゃない。分かっているのに、今、目の前で心配そうな顔をしているのは、私だけだ。
──これは、いったい誰の気持ちなんだろう。
琴葉のために感じているはずの罪悪感と、加賀見くんに見つめられて、ほんの少し浮ついてしまった自分への戸惑い。
二つが混ざり合って、うまく整理がつかない。
ノートの、あの一行が浮かぶ。『特に接点は多くない』と書きながら、やけに強かった、あの筆圧。
……もしかして、琴葉は。
そこまで考えて、頭の中が、一瞬で真っ白になった。
もし、琴葉の気になる人が加賀見くんなんだとしたら。
今、ここでときめいている場合じゃない。ううん、「フリ」ですらなく、本当に少し心が動いてしまっている自分がいるから、なおさら始末が悪い。
妹が想っているかもしれない人に、妹のフリをしてときめいている。そんなの、最低だ。



