聞いてから、余計な詮索だったかもと思ったけれど、加賀見くんは気にする様子もなく答えた。
「生徒会は毎年、大きな行事に一人、監督役として入ることになってるんだ。去年から、体育祭はずっと俺の担当」
「へえ……」
「まあ、細かい段取りを詰めるの、けっこう性に合ってるっていうのもあるけど」
少し照れたようにそう言って、加賀見くんは進行表をとんとんと指で整えた。
進行係の仕事は、体育祭のすべてが予定どおりに進むよう、見守ること。
競技が終わったら、次の道具を出す。選手を入場門に集める。放送係に合図を送る。
「去年は、八分遅れたんだ。閉会式が、夕方までずれこんでしまって」
「八分くらい、いいんじゃないの?」
「全部合わせて、八分。その間、日なたで待たされる人がいる」
加賀見くんは、進行表のいちばん下を指した。小さな字で、『救護テントの位置』『氷のう』『経口補水液』と並んでいる。
「遅れるより、倒れる人が出るほうが、困るんだ。……昨日、椎名さんが倒れたとき、俺、近くにいたのに、すぐ動けなかった」
「え」
「うち、病院だから。こういうの、つい考えちゃうんだよ。なのに、間に合わなかった」
言葉が、出てこなかった。
倒れた琴葉のことを、この人はずっと気にしてくれていたんだ。



