『椎名さんとなら、うまくやれる気がして』
さっきの加賀見くんの台詞は、聞かなかったことにしよう。そう決めたはずなのに、心臓は、まだ少し速いままだった。
会議室のドアが、背中で、ぱたんと閉まった。廊下のざわめきが、すっと遠くなる。
長い机の上には、書類の束と、ストップウォッチがひとつ。
加賀見くんは、向かいの椅子を私のために引いてから、自分も腰を下ろした。
……どうしよう。進行係が何をする係なのか、私は知らない。
でも、知ったかぶりをするほうが、あとで絶対に危ない。ゆうべ、ノートを閉じながら、何度も自分に言い聞かせたことだ。
「あの、ごめん。進行係って、具体的に何をするんだっけ。病み上がりで、頭がぼんやりしてて」
「ああ、そうだよね」
加賀見くんは、疑うでもなく頷いた。
「昨日は流れちゃったから、まだ何も話してないんだ。最初からで、ちょうどいい。……進行表、渡しておくね」
ほっ。助かった。
差し出された紙には、競技の順番と時間が、びっしり書きこまれていた。四角くて、定規で引いたみたいにそろった字だ。
「そういえば、生徒会の副会長なのに、進行係までやるんだ?」



