私は北条さんに手を引かれて階段を上がり、廊下の突き当たりの会議室へ。
ドアを開けると、長い机の周りに、六、七人の生徒が座っていた。
いちばん奥。書類を広げて待っていた加賀見くんが、顔を上げた。
「来たね、椎名さん。昨日は全体練習が中断して、打ち合わせが流れちゃったから。その続きから、はじめようか」
加賀見くんは書類の束を、とん、と机の上で揃えた。
「本番の進行係は、俺と椎名さんのペアだからね」
進行係? ペア?
琴葉のメッセージが、頭をよぎる。
『大きな仕事は、まだないはずだから』
……全然、ないはずじゃなかった。
戸惑う私に気づいたのか、加賀見くんが、書類から顔を上げないまま、ぽつりと言った。
「言っておくけど、このペア、俺が先生に頼んで決めてもらったんだ」
「……え?」
「椎名さんとなら、うまくやれる気がして」
軽い調子で、けれどまっすぐに言われて、返す言葉が見つからない。
たまたま、だよね。深い意味なんて、ないよね?
そう自分に言い聞かせながらも心臓は、さっきの階段のときよりも、ずっと大きな音を立てていた。



