「英語でつまずくなんて。病み上がりだから?」
「そ、そうかも」
「それと、瑛くんと、階段で話していたわね」
──瑛くん。
私や琴葉は「加賀見くん」って呼んでいるのに、この人は、下の名前で呼ぶんだ。
「たまたま、話しかけられただけで……」
「ふうん」
宮川さんは、まっすぐ私を見つめた。
「留学の選考、あなたも受けるのよね? あたし、負けないから」
そう言い残して、髪をふわりと揺らしながら、歩いていく宮川さん。
その背中は、とても真っ直ぐだった。
負けず嫌いを絵に描いたような人だ。同時に、あの視線を向けられながら毎日勉強してきた琴葉って、やっぱりすごい。
はぁ、と息を吐いて、私は歩き出した。
◇
やっと、終わりのチャイムが鳴った。
帰りのホームルームが終わると、私は机の下で、こっそりノートを開いた。
隅に書いた数字を消して、書き直す。
【選考日まで あと44】
やった。一日目、なんとか乗り切った! 嬉しくなって、星印の横に、二重丸までつけてしまう。
そのとき。
「椎名さーん!」
教室の入り口で、北条さんが、ぶんぶんと手を振っていた。
「実行委員の集まり、会議室だよ。もう、みんな集まってるって!」
「え、集まり? 今日?」
「うん。加賀見くんが待ってるよ?」
……え?



